田んぼの生物多様性向上10年プロジェクトの発進
日本の自然を守ってきた田んぼを見直し、取り戻すために
ラムネットJ水田部会/にじゅうまるプロジェクト運営メンバー
安藤よしの
田んぼの生きもの調査
■田んぼ10年プロジェクトとは
2013年2月9日、田んぼの生物多様性に関心を持つたくさんの人々が、小山市生涯学習センターに集まり、「田んぼの生物多様性向上10年プロジェクト」(略称「田んぼ10年プロジェクト」)を発進させました。
このプロジェクトは2010年に名古屋で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(CBD COP10)で採択された「愛知目標」の達成のために、水田を対象にした目標(水田目標)を定めて行動していこうという取り組みです。愛知目標では生物多様性の保全・回復のために、2020年までに達成すべき20の個別目標が定められています。田んぼ10年プロジェクトでは愛知目標に準じた18の水田目標を設定し、行動計画を策定しました。この行動計画に沿って、これまで日本各地で実施されてきた田んぼの生きものと人々の持続可能な暮らしを取り戻すためのさまざまな活動を束ね、良い事例を拡げてより大きな力にしていくことが、田んぼ10年プロジェクトの目的です。
田んぼ10年プロジェクトは、多数の団体・個人の参加と行動によって成り立つものなので、特別な難しい行動を強いることのないように工夫されています。参加されるみなさんには、例えば、有機の米づくり・生きもの調査・田んぼ周辺の里山や水路の手入れなど、これまでそれぞれの地域でされてきた活動を、田んぼ10年行動計画に基づく活動として登録・実践していただきます。ラムネットJでは、少なくとも「国連生物多様性の10年」(後述)の最終年である2020年まで、登録された活動の進行状況を評価分析しながら、目標の実現に向け、現実的でかつ意欲的な実施方法を提案・実施し続けていきます。
2月9日の小山市でのキックオフ集会に参加されたみなさん
■プロジェクトの誕生まで
2008年のラムサール条約COP10(韓国)では、ラムネットJ水田部会が中心となって政府に働きかけ、田んぼに湿地としての生物多様性の向上を求める「水田決議」が採択されました。また、2010年のCBD COP10でも官民協力で田んぼの生物多様性に関する決定が採択されました。
CBD COP10で、NGOの働きかけによってできたもう一つの大切な決定が「国連生物多様性の10年」です。これはラムネットJの呉地正行さんが発案し、柏木実さんを中心とするCBD市民ネットの「国連生物多様性の10年部会」が政府等と交渉し獲得した成果で「2011年〜2020年の10年間、愛知目標の実現をめざしてあらゆる主体が取り組むこと」としています。
田んぼ10年プロジェクトはこれらの決定を受けてCBD COP10直後、ラムネットJの水田部会の話し合いの中で生まれました。2011年には愛知目標を民間で推進する「にじゅうまるプロジェクト」に参加し、2012年11月の行動計画作りワークショップ等を経て、今年2月9日のキックオフイベントで正式に発足しました。
イベントで発表された「田んぼ10年行動計画2013」は、農家・自治体・研究者を含む多数の人々の意見に基づき、オリザネットが中心になってまとめあげたものです。田んぼ10年プロジェクトに参加しようとする人々にとっては、これまで実施してきた活動を生物多様性保全に関連付けて整理し、さらなる活動を組み立てるためのよい手引書となるはずです。
■これからの課題
より確実に水田目標を達成するためには、まず、これまで交わりのあった団体・個人に確実に参加していただくことが重要です。さらにこれまで活動を共にする機会のなかった人々へと広げ、全国規模で登録数を増やしていく必要があります。また、田んぼ10年プロジェクトは、地球規模の生物多様性の減少を止めるための良いモデルとなりますので、積極的に国内外に紹介していきたいと考えています。みなさんのご参加をよろしくお願いいたします。
田んぼ10年プロジェクトに参加希望の方は、ラムネットJのウェブサイトをご覧ください。行動計画書(PDFファイル)や参加登録書(Excelファイル)もダウンロードできます。
(ラムネットJニュースレターVol.12より転載)
2013年04月21日掲載