新たに条約湿地として登録された芳ヶ平湿地群
群馬弁護士会 嶋田久夫(写真提供:中之条町)
池塘(ちとう:高層湿原の小池)が点在する芳ヶ平湿原
今回登録された芳ヶ平湿地群は、草津白根山の北面から横手山にかけての上信越高原国立公園の特別地域から普通地域に指定されている範囲にあり、標高約2150mの渋峠の池、標高約1800mに位置する芳ヶ平湿原をはじめとして、大平湿原、平兵衛池、大池、水池、標高約1200m付近のチャツボミゴケ公園、それに草津白根山の火口湖である湯釜などで構成され、面積は887haに及んでいます。
一帯は、ワタスゲなどの高山植物や国の特別天然記念物であるニホンカモシカなど希少な動植物が生息し、日本固有種のモリアオガエルの繁殖地としては最も標高が高い所となっており、また、強酸性の水辺にしか生育しないチャツボミゴケの東アジア最大級の群生地も域内に含まれています。
酸性の水が流れる場所に生育するチャツボミゴケ
樹上で産卵中のモリアオガエル(日本最高標高繁殖地)
芳ヶ平湿地群をめぐっては、2013年3月、中之条町、草津町の町長や議員、観光団体の関係者らが、「芳ヶ平湿地周辺のラムサール条約登録を実現する会」を発足させたことから、登録へ向けての運動が展開されるようになりました。特に運動の中心となったのが当時の中之条町の折田謙一郎町長であり、その意味では行政主導の取り組み運動であったといえます。折田町長は、国や県に働きかける一方、専門家による調査委員会を作り、独自に自然環境調査や観察会を実施しました。
地元自治体からの環境調査記録の提出を受けた環境省は、登録基準を満たすとの判断を行い候補地と決定し、今回の正式登録となりました。
6月3日に行われた認定証の授与式には、政治的な理由から、登録運動の中心となった中之条町関係者の姿はなく、環境省の職員がメッセージを代読し、認定証も代理で受け取ることになりました。その時上映された芳ヶ平湿地群の紹介ビデオは、参加者からも賞賛の声が上がるほど美しいものでしたが、他の登録湿地の自治体からは皆さん参加していただけに、中之条町関係者の欠席は地元群馬の人間としても本当に残念でした。
(ラムネットJニュースレターVol.20より転載)
2015年09月18日掲載