ラムサール条約COP12(ウルグアイ)での活動報告
6月1日〜9日、ウルグアイのプンタ・デル・エステでラムサール条約第12回締約国会議(COP12)が開催されました。ラムネットJも参加して、NGOによるプレ会議やサイドイベントの開催、ブース展示等を行いました。その様子をご報告します。
■プレ会議などNGOによる活動
ラムサールCOP12への参加にあたり、ラムネットJは、条約実施における地域住民・NGOの貢献を明らかにすることをひとつの目的としました。2008年のCOP10やCBDのCOPでは準備されていた世界湿地ネットワーク(WWN)によるプレ会議の会場の確保などを、条約事務局に要望しましたが、回答もないまま会期を迎えました。特にアフリカからの距離もあり、WWN地域代表の参加も3人だけだったため、ラムネットJに大きな役割が求められました。また、戦略計画の決議案の段階で、締約国・事務局・専門家以外の役割がほとんど盛り込まれていないなど、NGO・地域住民などの貢献を重視するこれまでの条約の方向性からずれてしまうことが懸念の種でした。
WWNと共同で行った活動は、プレ会議、朝のNGO打ち合わせ、本会議の最初の部分におけるNGOからCOP12へのメッセージ、世界のNGOに対してWWNが行ったアンケートの分析結果を基にしたサイドイベント「条約についてのNGOの見方を理解する」、戦略計画決議案のコンタクトグループの討議への参加、会議の締めくくりのWWNのステートメントでした。
プレ会議は、本会議場とは別のホテルをラムネットJの助成金で確保し、60人以上の参加者を得て、各地域の湿地問題も含めて、本会議への取り組みが議論されました。COP12の討議に向けたメッセージは、ここでの議論を原案に、地元NGOのヴィルヒニア・フエレさんが行い、NGOとの協力を訴えました。
戦略計画のコンタクトグループの討議には、WWNのCOP12への取り組みを取りまとめたオセアニア地域代表のルイーズ・ダフさんが参加しました。締約国代表や、国際NGOも意見を述べて、地域住民、先住民、市民社会の活動が戦略計画に組み込まれることになり、事前の懸念は、言葉の上では少し払拭されたと言えます。
最終日のステートメントは中南米地域代表ラファエラ・ニコラさんが行い、「今回のテーマ"Wetlands for the Future"のFutureは今日から始まる」と、すぐに活動に取りかかるべきであることを訴え、COP議長のウルグアイ政府代表はこれを受けてその重要さを強調しました。
(柏木 実)
プレ会議に参加した各国のNGOメンバー
6月2日に行われた本会議の開会式
■水田関連サイドイベントと南米の水田情報収集
ラムネットJの水田部会ではラムサールCOP12に向けて、田んぼの生物多様性向上10年プロジェクトを国際的にアピールし、国際的なネットワークづくりをめざす準備をしてきました。COP12では、6月8日の夕方に、COP10(2008年)で日韓が共同で提案し採択された、水田決議(X・31)関連のその後の取り組みを振り返り、今後の道筋を考えるサイドイベントを、環境省、農水省と共催で行いました。
COP12終盤の夕方で、本会議も開催中という参加者を集めにくい状況にもかかわらず、予想外に多い80名程の方が参加し、準備した配布資料も食事もほぼなくなり、参加者の関心の強さを感じました。
水田関連のサイドイベントの様子
このイベントでは、ラムネットJの柏木実さんがコーディネーターとなり、背景説明(呉地)に続き、環境省、農水省、韓国環境部、(株)アレフ(橋部佳紀さん)に続き、ウガンダ政府からは「水田決議の実施」、また南米コロンビアからは「オリノコ川流域での水田農業」についての報告があり、質疑の後に、橋部さんとラムネットJの後藤尚味さんがタンゴの本場で「ふゆみずタンゴ」の踊りを披露して集会を終えました。
印象としては、ラムサールCOPで初めて水田の集会を行ったCOP7(1999年)に比べると、水田の生物多様性についてはだいぶ理解が深まったものの、アフリカや南米ではその視点がまだ希薄であることも再認識しました。今回の収穫のひとつはこれまで情報が乏しかった南米の水田農業について、個別の聞き取りやフィールドトリップ「米の路」で情報収集と理解を深めることができたことです。
(呉地正行)
水田関連のサイドイベントの様子
刈り取りが終わった南半球の冬(6月)の水田に放牧されている牛とコウウチョウ(Cow Bird)の群れ
■ブースでの展示や資料の配付
ラムネットJでは、COP12の全会期中、展示会場のブースでポスターなどの展示を行いました。ラムネットJのブースは、メインホールからカフェテリアへ通り抜ける通路に面していたため、多くの人の目に留まる好条件の場所でした。そのおかげか、国際会議の情報サイト「iisd Reporting Service」のラムサールCOP12ハイライトの写真コーナーに、ラムネットJの展示ブースが紹介されました。
展示会場への入場制限は事実上なく、近くの小中学生の社会見学コースにもなってにぎわいました。子供の多い日は、田んぼ10年プロジェクトの「田んぼわらし」のシールや、田んぼの生き物シールが飛ぶように消えました。
ブースでは(株)アレフの「ふゆみずタンゴ」を小型モニターで自動再生していましたが、中南米の血が騒ぐのか、皆モニターの前ですぐに真似をして踊りだしました。すかさずサイドイベントのチラシを渡し、最後にみんなで踊るので来てね!と伝えると、かなりの確率で参加表明し、実際に来てくれたのには驚きました。
(後藤尚味)
2015年09月18日掲載