ラムネットJのラムサールCOP12でのアピール「日本の条約湿地50から100へ」

─50か所となった日本の条約湿地をさらに増やして100か所をめざす─

■35年間で50か所の登録を達成
 2015年5月、4か所の条約湿地を新規登録して、日本の条約湿地は50か所になりました。1980年にラムサール条約に加盟すると同時に釧路湿原を最初の条約湿地に登録して以来35年を経て50か所の登録を実現したのです。
 この間の登録数の推移を見ると、最初の登録から1999年のCOP7までの19年間では11か所しか登録されていません。しかし、COP7では決議Ⅶ.11「ラムサール条約の国際的に重要な湿地のリストを将来的に拡充するための戦略的枠組み及びガイドライン」が採択され、COP7当時世界で1000か所近くに達していた条約湿地を2005年のCOP9までに少なくとも2000か所に倍増することが短期目標として掲げられたことにより、日本も条約湿地の倍増をめざすことになりました。COP8の2002年に2か所を、COP9の2005年には実に20か所の新規登録を行い、COP7からCOP9の間に、日本は11か所から33か所の3倍増を実現したのです。
 その後は、COP10の2008年に4か所、COP11の2012に9か所、そしてCOP12の2015年に4か所と、2005年の20か所の登録を境にその後の10年間はCOP7までの3倍以上のぺースで17か所が新規登録されました。
 このように登録が進むようになった背景には、2004年の第3次生物多様性国家戦略で、ラムサール条約湿地の登録に関しCOP 10までに10か所の新規登録の数値目標が設定され、2012年の生物多様性国家戦略2012では、2020年までに10か所の新規登録の数値目標が設定されたことがあります。
 生物多様性国家戦略2012の下で、今回4か所が登録されたことからすれば、日本は慣例としてCOP開催の度に新規登録を行いますので、COP13が開催される2018年に6か所以上の新規登録をめざすことになります。

■日本国内には150か所以上の潜在候補地が存在
 私たち日本で湿地保全に取り組んでいるNGOは、20か所の新規登録を行った2005年の時点で、日本は長期的には100か所程度の条約湿地登録をめざすべきことを環境省に提唱しており、その際に、当時の環境省担当者からは、日本での条約湿地登録は50か所程度が上限との見解が示されました。
 しかし、私たちは、第3次生物多様性国家戦略策定の際にも、COP10までに新規登録20か所の数値目標を設定すべきと環境省に提言して、結果的には10か所の数値目標が設定されました。2010年に環境省がクライテリアを充たす条約湿地潜在候補地を選定するための条約湿地候補地検討会を設置した際にも、中長期目標として「2030年のCOP17までに、少なくとも100か所以上、のべ75万ヘクタール(わが国の国土面積の約2パーセント相当)以上の湿地を登録する」こと、短期目標として、「COPが開催されるごとに、新たに、10か所以上、追加登録分と既存登録地の登録範囲の拡大によってのべ10万ヘクタール以上の湿地を登録する」ことを定めるべきであると提言しました。
 そのような働き掛けが功を奏したのか、2010年9月に環境省が発表した条約湿地潜在候補地は172か所にのぼり、2005年当時の50か所が上限とする条約湿地に関する環境省の認識は完全に過去のものとなったのです。

■中長期目標として100か所の登録を
 この5月に50か所の条約湿地登録が実現し、日本は、中長期目標として正式に100か所の登録をめざすべき時期を迎えました。2010年に選定された172か所の潜在候補地の中から既に12か所が条約湿地に登録されましたが、まだ160か所もの潜在候補地が残っており、このうちの3分の1を登録するだけでも、日本の条約湿地は100か所を超えることになります。
 COP12で採択される予定の決議Ⅻ.2「ラムサール条約2016−2021年戦略計画」でも条約湿地の顕著な増加が重要な目標の一つとされています。日本が締約国としての責任を果たしていくためには、クライテリアを充たす160か所の潜在候補地を積極的に条約湿地に登録していくことが必要であり、あと50か所となった100か所の登録をめざすことは決して過大な目標ではありません。
 私たちNGOが10年前から唱えていた条約湿地100か所の中長期目標が現実化しようとする今、私たちは、その実現のために日本政府と可能な限り連携していきたいと思っています。
 「条約湿地50から100へ」の合言葉の下に。

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ラムサールCOP12の会場では、このアピールを掲載したポスター(左)の展示や、チラシ(右)の配布を行いました

ラムネットJニュースレターVol.20より転載)

2015年09月18日掲載