湿地巡り:宍塚の里山(茨城県)

宍塚の自然と歴史の会 佐々木哲美

 JR土浦駅・つくばTXつくば駅から、いずれも約4kmにある「宍塚の里山」は、東京駅から50km、土浦市宍塚側が100ha、つくば市側が約80haの里山です。環境省「生物多様性保全上重要な里地里山」に選定され、中央にある宍塚大池は、広さ約3.3haの溜め池で、「ため池百選」(農林水産省)にも選定されています。この里山は雑木林・谷津・田や畑・草原・湿原、昔ながらの小川や湧水など、多様な自然環境によって構成されています。多様な環境要素が幾多の生き物を育む場となり、レッドデータブックに掲載されている数多くの種が確認でき、この里山の重要性の根拠の一つとなっています。

宍塚の里山の地図
宍塚大池
宍塚大池

 また、里山は人の暮らしと共に利用されてきた場所であり、大池を囲むように旧石器時代から近代までの遺跡、遺構が高密度に散在し、池の北側には宍塚古墳群、南西側には国指定遺跡である上高津貝塚が存在します。まさに自然環境、歴史的な環境に恵まれた里山となっています。

宍塚米オーナー制と自然農田んぼ塾で維持された谷津田
宍塚米オーナー制と自然農田んぼ塾で維持された谷津田
田植えをする田んぼの学校の子どもたち
田植えをする田んぼの学校の子どもたち

 ここに魅せられた近隣住民は宍塚の自然と歴史の会を1989年に発足させ、保全活動を30年間継続してきました。「宍塚の里山」全体としての保全・利活用を主眼とし、自然環境調査、地元住民からの聞き書き調査、雑木林、草原、竹林、湿地、小川の保全、畑での耕作、谷津田農家の耕作支援、自然農田んぼ塾による有機水田耕作の実践などの活動を行っています。また、テーマ別観察会、毎週の観察会、探鳥会、田んぼの学校の開設、学習会などの環境教育活動も進めています。さらに、会報の発行、土浦市、つくば市の小学校への案内配布、シンポジウム開催などの普及活動も実施しています。その結果、各方面から褒章を受けるなど社会的評価を得て、市民の関心も高まっています。地元自治体は、現時点では、この地域の将来を市街地開発と保全の両論併記の形としています。我々は、この緑豊かな自然環境を保全するために、ここで展開されている活動を活かした将来設計をするように働きかけています。

 (ラムネットJニュースレターVol.33より転載)

2018年12月15日掲載