湿地巡り:都立東京港野鳥公園(東京都)
(公財)日本野鳥の会 チーフレンジャー 森 初恵
東京都大田区。浜松町と羽田空港を結ぶ東京モノレールの流通センターから15分ほど歩くと、緑の木々が茂った一帯にたどり着きます。東京湾奥部にあたるこのあたりは、元々は浅瀬の海が広がりノリの養殖などの漁業が盛んな地域でした。しかし、1960年代に埋め立てられ大井ふ頭と姿を変えました。放置期間に池や湿地、草地やアシ原が広がり、野鳥をはじめとする多種多様な生きものが生息するようになりました。そして野鳥を楽しむ人々も集まってきました。本来市場が建つ予定でしたが、地元住民をはじめとする保護運動がおこり、その熱意に東京都も理解を示し1989年東京港野鳥公園として開園します。
1970年代の野鳥公園の風景
公園の面積は36ha。西側は田んぼや雑木林、淡水池の水を循環させた小川など里山をイメージしたエリア。東側は2つの淡水池と水門で東京湾とつながる人工干潟が復元された水辺のエリアです。これまでに227種の鳥類が確認され、2000年6月には「東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップ」の参加湿地となり、国際的にシギ・チドリ類の重要な生息地であることが認められました。拠点施設となるネイチャーセンターは干潟を見渡せるように設置されており、地下1階には干潟の上を歩ける遊歩道があります。カニの仲間や、東京湾が生息地の北限となるトビハゼなどの貴重な生きものを間近に観察することができます。
干潟を見渡せるネイチャーセンター
干潟で休むシギ・チドリの仲間
今年、開園30年を迎えますが、周辺地域も公園の環境も、そして関わる人々も変化してきました。埋め立て地に人工的に自然を作り直したこの場所は、野鳥の生息環境の再現と保全を大きな目的としたサンクチュアリです。この節目の年に、どうしたら野鳥をはじめとする生きものにとってより良い環境になるのか、そして自然に親しめる場所として次世代へとつなげて行くために、どのような「場」であるべきか、今一度見直すことが重要だと考えています。
(ラムネットJニュースレターVol.34より転載)
2019年02月07日掲載