辺野古の埋め立て工事の現状

日本自然保護協会/ラムネットJ理事 安部真理子

 3月19日の朝のNHKのニュースで前日の夕方、沖縄のジュゴンが今帰仁村運天漁港の沖合(沖縄島西海岸)で打ち上げられ死亡したと報じられました。沖縄島周辺にはジュゴンが3頭棲息していることが知られており、沖縄島東海岸を主な生息域にしていた個体AとCは現在、行方がわかりません。今回死亡した個体Bは古宇利島周辺を主な生息域としており、東海岸に位置する辺野古新基地建設現場からは遠い場所です。しかし、日本自然保護協会では以前からジュゴンが辺野古の埋め立て用土砂の運搬船の影響を受ける可能性を指摘してきました。この運搬船は本部地区で土砂を積み、北部を回って東へ移動するため、ジュゴンの移動ルートと重なります。従って今回のジュゴンの死がこの埋め立て計画と全く無関係とは言えないと思われます。
 2018年8月に沖縄県により米軍普天間飛行場代替施設建設事業に伴う公有水面埋め立て承認手続きが撤回されました。翌日から、沖縄防衛局長が石井啓一国土交通相に申し立てた沖縄県の埋め立て承認撤回処分の執行停止が認められるまでの2か月間にわたり、臨時制限区域の中に入り調査をすることができました。その結果、護岸工事が進んでいる海草藻場ではすでに海草の多様性が失われつつあり、ジュゴンが好んで食べるウミヒルモなど3種類の海草が占める割合が減少し、赤土などによる海水の濁りに強いボウバアマモが占める割合が増えたことがわかりました。また護岸による海流の変化で、岩や砂が堆積したり海底がえぐられた状態になったりと地形の変化もあり、浅瀬に少ない大型魚の群れも見られるなどすでに生物相の変化も始まっていました。

死んだジュゴン個体B(写真提供:松野安男さん)
死んだジュゴン個体B(写真提供:松野安男さん)
県民投票に向けた活動の様子(写真提供:高垣喜三さん)
県民投票に向けた活動の様子(写真提供:高垣喜三さん)

 10月30日には沖縄県知事選挙があり、新基地建設反対の立場をとる玉城デニー知事が当選しました。そのようななか11月1日には国による工事が再開し、12月14日には土砂投入が始まりました。ラムネットJからも緊急声明を出しました。これまでの工事でも環境に影響は出ていましたが、土砂の投入は後戻りができない自然破壊です。海草藻場はジュゴン、ウミガメをはじめとする多くの生き物の幼魚や幼生が過ごす場所で海のゆりかごの機能を果たしています。赤土が混ざる土砂投入は、この機能を破壊することになります。この工事を強行することは、2015年に国連が採択し日本政府も推進しているSDGs(持続可能な開発目標)の達成に背を向けるものです。
 また今年2月24日は沖縄県民投票が行われました。投票率52・4%のうち、埋め立てに「反対」の割合が72・2%となり、民意が圧倒的に示されたこととなります。
 さらには、最近になり軟弱地盤があることが指摘されています。地盤改良のためには砂の杭を約7万7千本も打ち込む必要があり、防衛大臣は県外からの砂の調達も検討しているとのことです。辺野古の埋め立ては辺野古だけの問題ではありません。日本政府は普天間飛行場代替施設建設事業にかかる一切の作業を即時中断すべきです。

ラムネットJニュースレターVol.35より転載)

2019年05月01日掲載