湿地巡り:谷津干潟(千葉県)
習志野市谷津干潟自然観察センター 芝原達也
東京湾最奥部にある谷津干潟は、東京駅から電車で30分ほどの千葉県習志野市にあります。住宅地が広がる埋め立て地と高速道路に囲まれた面積約40haの干潟は、東西1.1km、南北0.4kmの長方形で、東京湾と2本の水路で結ばれて潮の干満があり、かろうじて干潟の生態系を保つ都市湿地です。
谷津干潟は、市民による長年の保護運動の末、1988年に国の鳥獣保護区に指定され守られた歴史があり、1993年にシギ・チドリ類の重要な生息地としてラムサール条約に登録され、渡り性水鳥の保全を目的とする東アジア・オーストラリア地域フライウェイパートナーシップに1996年に参加した日本を代表する干潟の一つです。
谷津干潟の魅力は、都市にありながら水鳥をはじめカニやゴカイ、貝などの底生生物、ボラやアカエイなど魚類が集まり、豊かな生命の営みに触れられることでしょう。
干潟の周囲は「谷津干潟公園」として遊歩道が整備され、干潟を間近に観察できます。南岸には「谷津干潟自然観察センター」があり、干潟を展望できる観察フロアでレンジャーの案内を受けながら干潟に飛来する水鳥の観察を望遠鏡で楽しめます。観察センターの干潟体験プログラムに参加すると、普段入れない干潟に降りてカニやゴカイ、魚など水鳥以外の生物に触れられます。
埋め立て地に囲まれた都市湿地─谷津干潟
住宅地を背景に舞う、シギ・チドリたち
シギ・チドリの飛来数は、ラムサール条約登録時の4分の1以下に減少していますが、今も重要な生息地であることに変わりありません。今年は、脚に標識を装着した同一個体のキアシシギ2羽が9年連続で谷津干潟に飛来し話題となりました。近年は海藻のアオサが大量に繁茂し、夏に枯れて腐敗臭が生じるため、環境省と習志野市がその対策に取り組んでいます。また、外来の二枚貝ホンビノス貝が高密度に生息し、その貝殻の堆積による水流の阻害が懸念されています。観察センターでは、今年6月にホンビノス貝の潮干狩りを楽しみながら干潟を守る「環境保全型潮干狩りイベント」を実施しました。レクリエーションとワイズユースをつなぐ試みは、未来にわたって谷津干潟を守る可能性があると感じています。今後も関係者の皆さんと連携し保全とワイズユースを実践していきたいと思います。
(ラムネットJニュースレターVol.37より転載)
2019年11月18日掲載