ホープスポットに認定された辺野古で続く環境破壊
日本自然保護協会/ラムネットJ理事 安部真理子
■辺野古埋め立て工事の状況
米軍普天間飛行場代替施設建設事業は、2018年8月に沖縄県により公有水面埋め立て承認の撤回が行われました(ニュースレター35号参照)。その後、沖縄防衛局が10月17日に公有水面埋立法を所管する国交相に行政不服審査法に基づく「撤回の効力停止」などを求め、国交相は同30日に効力停止を決定し、2018年12月14日から米軍キャンプ・シュワブ南側の護岸で囲った海草藻場の広がる区域への土砂の投入が続いています。
最初は米軍キャンプ・シュワブ南側の6.3haの区域で投入が始まり、続いて、隣接する33haの区域でも投入が行われています。また護岸建設の方も、辺野古岬の先端から沖合に延びる護岸の建設が行われています。
沖縄ドローンプロジェクト(2019年11月15日)
海草藻場とコブヒトデ
■工事の問題点や環境への影響
土砂投入も大きな問題ですが、2018年夏に護岸で囲われて1年以上経つ区域では海草など多くの生き物が死滅したものと思われます。また辺野古岬から沖合に伸びる位置に作られている護岸は、外洋から陸に近い大浦湾に入ってくる流れをせき止める形であるため、湾全体の環境に影響が及ぶことが予想されます。
さらに大浦湾の深場に問題があることがわかりました。海底に軟弱地盤があり、地盤改良のために、7万6699本の砂杭を打ち込む必要があることがわかりました。砂杭に使用する砂の量は東京ドーム5・25杯分にあたる約650万m3に達します。
また環境アセスメント終了後も、複数の分野において新種、希少種、珍しい生態を持つ生物(例:コモチハナガササンゴ群集)などが発見されていることから、深場の軟弱地盤を含む地形こそが大浦湾の生物多様性を支える基盤になっていることが示唆されています。地盤改良工事による懸濁物の流動等により、大浦湾の注目すべきサンゴ群集や砂泥底に生息する生物に多大な影響が及ぶことが懸念されています。
2019年末に政府は工期も費用もめどがつかないと述べ、沖縄県の試算では2兆5500億円、最短で12年かかるとのことです。また地盤改良工事を進めるには県知事の許可が必要となり、玉城デニー知事は許可しない考えです。
地盤改良に用いる砂は日本にとって大切な資源です。砂は気候変動に伴う海面上昇により9割失われると予測されて(有働ら、2014)いるほど貴重であるのに資材として使われる予定です。
さらに、これまでは県外から大半を調達する予定だった埋め立て土砂について、全量を沖縄県内ですませる計画が防衛省により明らかになりました。沖縄県が設置した埋め立て土砂条例を避けることが目的のようです。全く異なる自然環境を持つ県外から持ち込む土砂には外来種が付着している可能性があり、外来種防除のためには県外から持ち込まないことは大切です。ですが、埋め立てに必要な土砂の全量を沖縄県内で賄うということはそれだけ沖縄の自然が壊されることになり、別の問題が生じます。
工事により、熱帯雨林の35倍の速度で炭素を固定できると言われている海草藻場を日々失い、今後は砂や土砂も失うことになります。すでにこの海域を利用していたジュゴン2頭は行方不明となり、かつての光景は見ることができません。
■ホープスポット認定と署名活動
このようななか新たな進展がありました。2019年10月、辺野古・大浦湾一帯が日本初の「ホープスポット」(希望の海)に加わりました。世界的に有名な海洋学者シルヴィア・アール博士が率いる米国の団体「ミッション・ブルー」が世界で最も重要な海をホープスポットに認定し、"保護の網"をかけることを2009年から実施していますが、「辺野古・大浦湾沿岸一帯」が選ばれました。
現在、世界で約120カ所以上が認定されており、辺野古・大浦湾は世界で117番目、そして日本初の認定です。世界的にも価値が認められた辺野古・大浦湾の保護を進めるために、日本自然保護協会の呼びかけで署名を集めています。この署名は2020年2月末まで行っており、沖縄県には3月に行われる沖縄県議会に陳情文として提出する予定です。ミュージシャンの坂本龍一さん、写真家の中村卓哉さんも応援してくださり、1月20日現在1万7000通を超えました。引き続き多くの皆さまのご協力をお待ちしています。下記のウェブサイトからご署名をお願いいたします。
辺野古・大浦湾 ホープスポット署名サイト
http://bit.ly/henoko-ourabay_HopeSpot
参考:ホープスポットについて
https://www.nacsj.or.jp/2019/10/17616
(ラムネットJニュースレターVol.38より転載)
2020年03月05日掲載