風蓮湖─冬から春へ
(公財)日本野鳥の会/根室市春国岱原生野鳥公園レンジャー
古南幸弘(文)・稲葉一将(写真)
風蓮湖は、北海道東部の根室半島のつけ根に位置する、東西約20km、面積約5,600haの日本で13番めに広い湖です。北から延びた砂嘴(走古丹:はしりこたん)と、その南に延びた砂の島(春国岱:しゅんくにたい)によりオホーツク海からへだてられた、平均水深約1mの潟湖で、湖内外にはアマモ場が広がり、干潮時には広い干潟が現れます。13本の流入河川の河口には、泥炭の堆積する湿原や、アッケシソウなど塩分に強い植物が生育する塩性湿地が見られます。シギ・チドリ類やガンカモ類等の水鳥の重要な渡りの中継地となっており、またタンチョウなどの絶滅のおそれのある鳥類の繁殖地にもなっていることから、湖岸の春国岱とともに、2005年、日本で16番めのラムサール条約湿地に登録されました。
オジロワシとオオワシ
オオハクチョウ
2月から3月は、風蓮湖が最も劇的に姿を変える時期です。風蓮湖は1月になるとほぼ全面が結氷しますが、この広い氷原に、周辺の湖沼も含めて約700羽のオオワシ(国内越冬数の5割弱)と約200羽のオジロワシ(同3割弱)が集まります。これは、氷の下に網を張ってコマイやワカサギ、ニシンなどを捕える「氷下待ち網漁」の際に、目的外の漁獲物が出るのを狙って集まってくるのです。漁の後、氷上に残される魚は秋、ワシたちが好むサケに比べると小さなものも多いのですが、オオワシとオジロワシが入り乱れ、競い合って食べています。
3月に入ると、湖の氷は次第に海の側から解けてきます。氷下待ち網漁は終わり、ワシ類は徐々に減り(オオワシと大半のオジロワシはロシアの繁殖地に帰ってゆきます)、代わって本州からオオハクチョウの群れが水面に立ち寄ってゆきます。根室ではオオハクチョウの多くは秋と春に現れる旅鳥で、湖底のアマモを盛んに食べて栄養を補給し、ワシと同じように繁殖地へと旅立って行きます。
桜が咲くのはまだひと月以上先のことですが、このようにして風蓮湖には春が訪れるのです。
(ラムネットJニュースレターVol.39より転載)
2020年06月24日掲載