今日の焦眉の課題「地球温暖化問題と私たち」─持続可能な開発目標(SDGs)・生物多様性条約とラムサール条約の関係で考える─
三番瀬のラムサール条約登録を実現する会 立花一晃
現在の私たちの社会は、人類が進めてきた現代の科学技術の発展によるさまざまな恩恵により、一見豊かな社会のように見えます。しかし、この社会は背後に大きな問題を抱えています。その一つが地球温暖化に伴う課題です。人類に襲い掛かるさまざまな脅威に対し、私たちが何を拠り所としてこの難問に対処すべきか、具体的に検討することが求められています。私はこの問題を今日の自然現象のすべてに深く関わる「持続的な開発(SDGs)」と「生物多様性条約」、さらに、ラムサール条約などに関係する基本的課題として考える必要があると思います。
まず、この問題を真の意味で理解するために、基本的な知識として、SDGsについて次の点を明確にしておきたいと思います。
投資家がSDGsに注目しているのは、実は投資家がいきなり「儲けばかりじゃダメだ、もっと環境や社会に役立つことをしたい」と聖人として生まれ変わったからではありません。言葉を選ばずにいえば「儲けの手段としてESG(環境・社会・企業統治)投資を行っている」ということです。すなわち持続可能な世界に考慮していない企業に投資するよりも、持続可能な世界に考慮している企業に投資した方が儲かるようになったということです。
次に、水の確保は地球の自然環境の持続的維持に欠かせない課題です。その課題にとって重要な国際的な条約がラムサール条約です。水の問題は今後ますます深刻になる課題ですが、ラムサール条約は生物多様性の課題と直接関わっています。そこでラムサール条約や生物多様性の確保と深く関わる「愛知目標」について考えたいと思います。
愛知目標は愛知ターゲットともいい、地球規模で劣化が進んでいるとされる生物多様性の損失に歯止めをかけるため、2010年10月に開催された第10回生物多様性条約締約国会議(COP10)で合意された20項目の目標です。2011年以降の戦略計画で、人類が自然と共生する世界を2050年までに実現することを目標とします。そのための戦略目標5項目を具体的に定めています。
続いて、地球温暖化問題解決と気候変動に関する道筋を考えてみましょう。最初に、地球温暖化防止の国際協定であるパリ協定について内容を明確にします。パリ協定は、第21回気候変動枠組条約締結国際会議(COP21)が開催されたパリにて、2015年12月12日に採択された、気候変動に関する多国間の国際的な協定です。
パリ協定では、産業革命前からの世界の気温上昇を2度未満に抑えるため、今世紀後半に二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを目指しています。そのために各国が自主的にガスを減らす目標を定めると約束しました。
ところが、2020年4月21日の朝日新聞の記事によると、世界の国々の削減目標を足し合わせても、パリ協定の目標には到底届かないので、今世紀に3度以上気温が上がりそうなのです。そうならないように、国連は各国に5年ごとに削減目標を強化するよう呼び掛けています。その最初の機会が今年です。
しかし、日本政府の削減目標は「2030年度までに2013年度比で26%減」という5年前と同じままです。朝日新聞の記事では「日本はCO2を世界で5番目に多く排出しているだけに、みんながっかりした」と書かれていますが、がっかりというか強い懸念と怒りに近い気持ちではないでしょうか? 二酸化炭素排出量は、石油や石炭などの使い方によって大きく変わります。日本は国のエネルギー利用の計画を来年に見直す予定で、削減目標の改定が間に合わなかったといっています。今年の11月に各国の目標について話し合う国連の会議が予定されていましたが、コロナウイルスのせいで来年に延期されました。それまでに日本の目標の引き上げを求める声を大いに強める必要があります。
コロナウイルスの世界的広がりによる経済活動の縮小で、空気の汚染が改善されているそうです。パリでは都市封鎖開始から2日で汚染が約30%改善されたとのことですので、現代人の日常が環境にいかに負荷をかけているかが分かります。たびたびの異常気象で脅かされても改められなかった人類にとって、今後の大きな教訓となることを切に願わずにはいられません。
(ラムネットJニュースレターVol.40より転載)
2020年09月06日掲載