報告:湿地のグリーンウェイブ2020 オンライン・ミーティング
〜新型コロナ禍時代の湿地保全・賢明な利用についてみんなで語ろう〜
ラムネットJ理事 原野好正
毎年、5月22日は国連の定めた「国際生物多様性の日」です。生物多様性条約事務局は、この日に植樹などを行う「グリーンウェイブ」への参加を提唱しています。
日本でも、環境省などが主唱していますが、ラムネットJはそのオフィシャル・パートナーとして独自に「湿地のグリーンウェイブ」を展開し、2年に1回程度、全国報告会を開催してきました。
しかし、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染対策のために、各地でイベントの中止や延期が相次ぎました。また、全国報告会の開催もままならず、2020年10月24日に「新型コロナ禍時代の湿地保全・賢明な利用についてみんなで語ろう」をテーマにオンラインミーティングを開催しました。
Zoomで出演された皆さん。https://youtu.be/iFzaL_Ksbykで動画を視聴できます
■全国4か所からの報告
第1部では、4つの湿地で活動する5人の方からの報告がありました。
高橋久さん(河北潟湖沼研究所)によると、河北潟(石川県)での活動は地域と密着したもので、コロナ禍でも中止することが困難な一方、小規模・野外・近距離での開催のため、感染対策を取れば小さなリスクで実施できたとのことでした。
吉野川河口(徳島県)のラムサール条約湿地登録を目指している井口利枝子さん(とくしま自然観察の会)たちは、例年開催している子どもや家族連れを対象とした活動は自粛。一方で、大学生を対象とした活動など、新たな展開もあったそうです。
高野茂樹さん(八代野鳥愛好会)からは、球磨川河口(熊本県)に飛来するさまざまなシギ・チドリの観察や河口・干潟の保全活動と、2020年7月の豪雨災害による流木の状況が報告されました。
泡瀬干潟(沖縄県)の屋良朝敏さん(泡瀬干潟を守る連絡会)と砂川かおりさん(沖縄国際大学講師)からは、観察・保全の拠点「ウミエラ館」が2020年4月をもって9年間の営業に幕を閉じたことなどが報告されました。
■コロナ禍時代のキーワードは「ワンヘルス」
草刈秀紀さん(Zoom映像)
第2部では、草刈秀紀さん(WWFジャパン)による基調講演「感染症と生物多様性~一つの健康が地球を守る~」と、河村玲央さん(環境省生物多様性主流化室長)による話題提供「グリーンウェイブについて」ののち、第1部の発表者などとのディスカッションを行いました。
ここで注目したいのが、草刈さんから提示された「一つの健康(ワンヘルス)」という概念です。新型コロナウィルスなど動物由来感染症・人獣共通感染症が、生態系と深い関わりがあることはよく知られていますが、これを解決するキーワードが「ワンヘルス」です。
「ワンヘルス」の概念では、「ヒトの健康」と「動物の健康」「生態系の健康」は密接なつながりがあり、統合的・総合的な対策が必要ですが、草刈さんはこの3つに加えて「健康な思想」が必須だと主張されたことが印象的でした。
そして、湿地のグリーンウェイブの活動が、ワンヘルスや「マンハッタン原則」に則したものであり、コロナ禍時代に不可欠なものであると指摘されました。
(ラムネットJニュースレターVol.42より転載)
2021年04月03日掲載