上関原発問題:海上ボーリング調査は今年も中止に
ラムネットJ理事 菅波 完
上関原発計画をめぐっては、2020年4月発行のニュースレター39号で上関の自然を守る会の高島美登里さんからの報告がありましたが、この冬も重要な動きがありました。中国電力は、上関原発建設のための地質調査として、一昨年に続いて11月初旬から海域でのボーリング調査を実施しようとしましたが、12月15日に今回の調査も中止すると発表しました。
右が祝島の漁船、左の船が中国電力(2020年11月13日、小中進さん撮影)
そもそも上関原発計画は、1982年に浮上したもので、上関町田ノ浦の浅瀬を埋め立てた敷地に原発を建設するものです。計画地対岸に位置する祝島の人たちをはじめとする根強い反対運動があり、埋め立て工事も実際には進んでいません。このボーリング調査を、中国電力は、「安全・安心な原子力発電所の建設に向けて必要な調査」だと説明していますが、2011年の福島原発事故を受けて上関原発の工事は中断、自民党に政権交代した後も、原発の新増設は「白紙」の状態です。いま、調査を急ぐ必要がないことは明らかです。
今回、現場の海域では、祝島の漁業者が漁を行っているところへ、中国電力側が船で近づき、舳先に社員が正座をして、漁業者に調査への協力を「お願いする」という光景が繰り返されました。祝島の漁業者は、原発計画に同意せず、補償金も受け取っていません。通常の漁を続けながら、原発計画にもボーリング調査にも反対であり同意していないという姿勢を示し続けました。そもそも、直接的に影響を受ける祝島の漁業者の同意を得ずに、中国電力が強引に原発計画を進め、ボーリング調査を行おうとしていることに最大の問題があります。むしろ中国電力は、原発建設に進捗がない状況が、祝島の人たちの反対運動のせいであるような印象を与えるために、不要不急のボーリング調査を進めようとしているのではないかとさえ思えます。
今年は政府が「エネルギー基本計画」を改定する年でもあり、将来の原発比率とともに、新規建設の扱いが上関原発計画に直結する重要な争点です。ぜひこちらにも注目をお願いします。
*現地の最新状況は、「上関原発を建てさせない祝島島民の会」のブログが参考になります。http://touminnokai.main.jp/
2021年04月03日掲載