泡瀬干潟のラムサール条約湿地登録に向けて─最近の経過と今後の展望─
泡瀬干潟を守る連絡会事務局長 前川盛治
沖縄県・沖縄市の泡瀬干潟のラムサール条約湿地登録の意義について、沖縄県議会質疑(2020年9月30日)で松田環境部長は、「泡瀬干潟が環境省の重要湿地500に指定されていた、ラムサール条約湿地候補地にも選定されていた、平成28年の重要湿地500見直しでも、泡瀬干潟が指定されていた......メリットでございますけれども、登録されますと国際的に重要な湿地であるということが表明あるいは世界的に認定される......観光振興、地域の経済活動にも寄与する」等と答弁しております。登録の意義、メリットは大きいものがあります。
泡瀬干潟での地元・高原小の干潟学習会(2020年9月14日)
私たちは、2020年度は4回にわたって、ラムサール条約湿地登録に向けた鳥獣保護区(特別保護区)の早期の指定について県知事・県環境部(自然保護課)に要請をしてきました。故翁長知事の2015年の早期実現の表明答弁、2019年の玉城知事の早期実現継続の答弁から5年余が経過しましたが、現時点でまだ実現しておりません。
これまでの経過をみると、まだ実現していないことの主な要因は、泡瀬干潟が鳥獣保護区に指定されると「埋立地の開発事業に影響があるのではないかという懸念があること」だと報道されています。この懸念について県環境部長は、私たちの要請(10月28日)や県議会答弁(9月30日)、東部海浜開発事業推進議員連盟の「鳥獣保護区指定中止要請」(9月25日)に対する回答で、「埋立地が鳥獣保護区に指定されても、埋立地の開発事業は規制されない。特別保護区での事業についても、工作物(人道橋建設)は認められる」と答弁しています。また、12月23日、沖縄市商工会議所ホールで、鳥獣保護区指定に反対する泡瀬復興期成会や東部海浜開発事業推進議員連盟に対する県環境部長の説明会でも、「埋立地は保護区から除外している」こと等、見直し案を示し、懸念払拭のために詳しい資料を基に説明しています。ところが会場では「何が何でも反対」「時期尚早」の声が多く、妥協、歩み寄りの雰囲気は全くない状況だったそうです。非常に残念なことです。反対の声の根本には「2区までの埋め立て推進」(現在の埋め立ては、裁判闘争の結果、1区の埋め立てで終わっている)があるといわれています。2区は絶滅危惧ⅠA類・クビレミドロ等の貴重な生物の生息地となっている生物多様性保全上重要な場所です。
県が埋立地を外して鳥獣保護区・特別保護区を見直し、沖縄市の指定反対者(泡瀬復興期成会など)に示した見直し案。沖縄市当局へは今後この案を説明していく
私たちは、2021年1月12日も、今後の対応について沖縄県(環境部自然保護課)と話し合いを持ちました。12月23日の説明会後の新聞報道で「登録は白紙・凍結」が報道されていることについては「県は断念しておりません。新聞記事でも断念とはなっていません。記事では白紙、凍結という言葉はありますが、真意を伝えていません」という報告で、沖縄市側へは1月~2月にもっと丁寧な説明をしていく予定だと話をしていました。私たちは今後の対応について新たな提案(今回の指定は、沖縄市側も了解している比屋根湿地だけにして、干潟の部分については今後継続して協議していく)をしました。自然保護課長は「ハードルは高い、困難かもしれないが検討してみる」という回答でした。今後に一縷の望みを持って期待しています。
(ラムネットJニュースレターVol.42より転載)
2021年04月03日掲載