湿地巡り:化女沼(宮城県)

大崎市産業経済部世界農業遺産推進課 鈴木耕平

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 化女沼は、宮城県の北部に位置する大崎市の丘陵地と平野部の境にあります。自然にできた沼を300年ほど前から水田の灌漑用ため池として地域の人たちが維持してきました。
 1995年には近くを流れる田尻川の洪水調節と農業用水を目的としてダム堰堤が建設され、現在の化女沼ダムになりました。
 化女沼およびその周辺では、水生植物、里山の植物など、これまでに700種を超える植物や110種以上の鳥類が確認されており、マガン、シジュウカラガン、亜種ヒシクイ、オオハクチョウなどのガンカモ類を始めとする多くの渡り鳥の越冬地となっています。
 その重要性が認められ、2008年に湖面部分の34‌haがラムサール条約湿地に登録されました。マガンは多い日で、2万羽が早朝に飛び立ち、周囲の水田で落穂やイネ科、マメ科の雑草などを食べて過ごします。近年では、シジュウカラガンも増加し、5千羽が飛来します。群れで行動するガン類が声を挙げながら一斉に飛び立つ光景は圧巻です。

亜種ヒシクイ
亜種ヒシクイ
マガンのねぐら入り
マガンのねぐら入り

 また、化女沼は、市街地からも近く、地域の人々の憩いの場にもなっています。週末には、散歩やランニング、近くの広場で遊具やバーベキューを楽しむ家族づれの姿がみられます。
 一方、1991年以降、オオクチバスやブルーギルなどの特定外来魚が確認され、在来魚が著しく減少するとともに、冬の気温の上昇や夕方や早朝に沼へ釣り人などが接近することによる「ねぐら」への影響か、亜種ヒシクイの飛来数が減少するなどの課題があります。

植栽・植樹作業

植栽・植樹作業

 そこで、大崎市では2012年から外来魚の調査や駆除を実施するとともに、訪れる人に湿地や自然環境への興味を持ってもらうため、2016年から環境教育ゾーンを設け、水生植物の埋土種子を使用した植栽や広葉樹の植樹などを地域のNPO、小中学校、市民ボランティアと一緒に行っています。
 今後、自然を身近に親しめる場所として地域の子供たちの学習、市民の憩いの場として活用を図るとともに、この風景を次世代に伝えていきたいと思います。

ラムネットJニュースレターVol.43より転載)

2021年05月22日掲載