玉島の埋め立て地における渡り鳥保護区の確保に向けた取り組みについて
ラムネットJ会員 西井弥生
岡山県倉敷市にある玉島ハーバーアイランドという埋め立て地の名前は、シギ・チドリに詳しい方なら、過去にヘラシギが飛来したことでご存じかもしれません。浚渫土砂を利用した土地造成事業は、水島側の埋め立てが1954年(昭和29年)に始まり、その後、高梁川を挟んで対岸の玉島側も同じく浚渫土による埋め立てが1987年(昭和62年)から始まりました。もともとは185haだったところ、1997年(平成9年)に改定され、245haとなり玉島ハーバーアイランドも生まれました。2011年に「国際拠点港湾」、「国際バルク戦略港湾」に選定されています。
岡山県は「瀬戸内海の環境の保全に関する岡山県計画」の中で次のように述べています。
「県内の干潟は、昭和20年頃には約4000ha存在していたが、大規模干拓や沿岸開発により減少し、その後の自然環境保全基礎調査では、昭和53年度に702ha、平成元年度に559haとなっており、平成18年度の瀬戸内海干潟実態調査(環境省)では527haであった。また、干潟については泥の堆積による環境の悪化が認められる場所もある。」
このような状況の中、今年、春の渡り時期の県内干潟調査では、300羽以上のハマシギ、150羽以上のトウネンが見られたのは玉島ハーバーアイランドだけでした。
47haとされている玉島ハーバーアイランドの埋め立て部分。渡り鳥のためには全部残しても足りないくらいだ
県は埋め立てに係る環境影響評価書の中で、干潟環境の代償として、埋め立て部分西側の沖に10haの干潟造成を計画しています。その中の鳥類調査は、埋め立て部分がまだ海の状態で行われ、シギ・チドリ類のほとんどは事業実施区域外(既存埋め立て部分)に存在したことから、埋め立てにあたっての影響は少ないと書かれています。
活動をしていると「人が埋め立てた部分に勝手に鳥が飛んでくる、人工干潟があるおかげで鳥のためにもなっている」と言う方がいますがそれは逆です。もともとは自然の干潟だった場所がどんどん埋め立てられ、仕方なくこの場所に降りざるを得なくなっただけです。
人々が憩える場所はすでに緑地として確保されている部分もあり、この造成干潟については渡り鳥の保護区として確保してもらうべく提案をしていきたいと思っています。
埋め立て地に飛来したシギ・チドリ類(上)と毎年少数が飛来するツクシガモ(右)
地元の保護団体にも声をかけていますが、工業用地での保護活動は難しいという声が多いです。元漁業関係者の方からも、鳥は人が来ない場所に集まるんだから、あなたも行かないほうが鳥のためだ、と言われたり。でも、このまま誰も何も言わなかったら、春に秋に渡ってきた多くのシギ・チドリたちは餌場と休憩場所の一つを失い、あとにはこれまで通り、舗装されて雑草が生えた緑地だけが残るのだろうと思います。
少しずつ、ラムネットJシギ・チドリ部会の方から活動の方法を教えていただいたり、実践に基づいた調査方法等を教えていただいています。
今後は地元の人たちの理解を得るべく、市民フォーラムの実施や調査を続けていきます。
(ラムネットJニュースレターVol.44より転載)
2021年08月12日掲載