上関原発建設工事の強行に対する抗議声明
ラムサール・ネットワーク日本は、中国電力が上関原発建設のための海域埋め立て工事を強行しようとしたことに対して、工事の即時中止を求める以下の抗議声明を9月16日に公表し、関係者にファックスで送付しました。
2009年9月16日
抗議声明
中国電力による上関原発建設工事の強行に強く抗議し、
住民を無視した工事の即時中止を求める
ラムサール・ネットワーク日本
中国電力は、祝島住民をはじめ上関原発に反対する人々を無視し、建設工事を強行しようとしている。私たちは、住民の意思を踏みにじり、かけがえのない漁場と自然豊かな海を破壊しようとする中国電力に対して強く抗議するとともに、工事の即時中止と原子力発電所建設計画の撤廃を求める。
中国電力によって原発建設計画が立てられている山口県上関町の長島、祝島およびその周辺は、生物多様性に富む海域であり、生息する野生生物の種の多様性や希少性、漁場としての価値から見て、瀬戸内海に残されている最も重要な海域と言える。
中国電力による環境アセスメント(2001年)とその後の調査は、この豊かな海域への影響を正しく予測し評価したものではなく、学会等の批判も受けていることから、謙虚に見直し、再度実施すべきである。
特に、準絶滅危惧種のスナメリ(日本哺乳類学会1997)にとっては瀬戸内海に残された唯一の繁殖地である可能性が指摘され、絶滅危惧Ⅱ類のハヤブサとカンムリウミスズメ(環境省2002)の繁殖地であることは重要である。また、底生生物や陸産貝類の中には未知の種が数多く含まれている。このような生物多様性に富む地域、海域は、「絶滅のおそれのある野生動植物種の保存に関する法律」や「瀬戸内海環境保全特別措置法」の趣旨からしても十分に保全されるべきである。
かつては豊かな漁場であった瀬戸内海は、現在でも埋立や汚染による環境悪化が続いている。しかし、西部に位置する長島、祝島周辺海域は、かつての瀬戸内の豊かな海域と景観を残しており、漁業資源も豊かである。ここではまさに、ラムサール条約が目指す、持続可能で賢明な利用が、何世代にもわたって実践されていたのであるから、良好な漁場として、将来にわたって保全するべきであり、原発建設のために破壊するべきではない。
そもそも原発は、建設のための埋立や造成による海域や陸域の改変、運転時の温排水や放射性物質の排出、万一事故が起きた場合の深刻な環境汚染など、自然環境に与えるダメージが極めて大きい。発電に伴って確実に発生する放射性廃棄物の処理は技術的にも社会的にも未解決であり、労働者の被爆も絶対に避けられない。その上、仮に重大な事故等を起こすことなく、発電所として機能するとしても、たかだか数十年が限度であり、私たちが目指す持続可能な社会とは、根本的に相容れないものである。
ラムサール・ネットワーク日本
共同代表 花輪伸一・柏木実・呉地正行・堀良一
2009年09月16日掲載