環境省に「条約湿地候補地選定に関する提言書」を提出
ラムサール・ネットワーク日本(ラムネットJ)では2010年1月7日に、ラムサール条約登録を担当している環境省自然環境局の野生生物課と懇談の機会を持ち、条約湿地候補地選定に関する提言書を提出しました。
この提言書では、2030年までに日本国内で100か所以上、75万ha以上のラムサール条約湿地登録を実現するべきとし、そのために従来の候補地選定方針の大幅な見直しを提言しています。以下に、冒頭の「提言の趣旨」と、本文「提言の理由」の目次のみを抜粋して掲載します。全文をお読みになりたい方は、以下のPDFファイルをダウンロードしてください。
- ラムサール条約湿地候補地選定に関する提言書 [PDF 400KB]
2010年1月7日
環境大臣 小沢 鋭仁 殿
特定非営利活動法人ラムサール・ネットワーク日本
代表理事
柏木 実
呉地 正行
花輪 伸一
堀 良一
ラムサール条約湿地候補地選定に関する提言書
提言の趣旨
- ラムサール条約湿地候補地選定に際しては、ラムサール条約が採択している「ラムサール条約の国際的に重要な湿地のリストを将来的に拡充するための戦略的枠組み及びガイドライン」中のラムサール条約湿地リストに関する展望(ビジョン)(「生態系の構成要素、過程及び恩恵/サービスを維持することにより、地球規模での生物多様性を保全し、人々の生活を維持するために重要である湿地の国際的なネットワークを構築し維持すること。」)、実施目標(「各締約国に、湿地の多様性並びにその主要な生態学的及び水文学的機能を完全に代表する条約湿地の国内ネットワークを設立すること。」等)を確認した上で、わが国の条約湿地リストに関する以下の中長期目標と短期目標を設定し、それらの目標を達成するためのラムサール条約湿地候補地選定方針が策定されるべきである。
[中長期目標]
2030年のCOP17までに、少なくとも100か所以上、のべ75万ヘクタール(わが国の国土面積の約2パーセント相当)以上の湿地を登録する。
[短期目標]
COPが開催されるごとに、新たに、10か所以上、追加登録分と既存登録地の登録範囲の拡大によってのべ10万ヘクタール以上の湿地を登録する。 - ラムサール条約湿地候補地選定方針は、「ラムサール条約の国際的に重要な湿地のリストを将来的に拡充するための戦略的枠組み及びガイドライン」中の「優先的に条約湿地に指定する湿地を特定するための体系的方法の採用に関するガイドライン」、「国際的に重要な湿地を特定するための基準並びにその適用のためのガイドラインと長期目標」、「個別湿地タイプを特定し指定するためのガイドライン」に忠実に準拠し、特に、以下の事項については特段の配慮をすべきである。
(1) 国際的に重要な湿地を特定するための基準2、3、4は、湿地に生息する水鳥と魚類以外の種のためだけでなく、適当な場合には水鳥と魚類のための湿地も同じく特定できる、対象範囲の広い基準である。
(2) 条約湿地の候補地を選定する際、優先する候補地を特定する。
(3) 規模の小さな湿地を見過ごさない。
(4) 候補地選定や条約登録に際し、既になにがしかの種類の保護区に指定されていること(予定を含む)を要求しない。 - ラムサール条約湿地候補地選定手続に際しては、湿地保全・生物多様性の保全に関わるNGOの意見を可能な限り聴取して、NGOの意見が最大限選定結果に反映されるよう配慮し、候補地となった湿地を賢明に利用していくための保全・管理に関する計画策定手続にNGOの参加を確保すべきである。
提言の理由(目次)
- はじめに
- わが国におけるラムサール条約湿地登録の経過と数値目標
- 数値目標の前提となる展望(ビジョン)と実施目標
- ヨーロッパ諸国と比較した日本の登録状況
- CBD のポスト2010年目標とラムサール条約湿地の国内ネットワークの構築
- 候補地選定方針に関して見直すべきこと(1)- 規模の大小と法的担保
- 候補地選定方針に関して見直すべきこと(2)- 優先順位付けと基準2~4
- 候補地選定方針に関して見直すべきこと(3)- まとめ
- NGOの期待に応える候補地選定と賢明な利用を~おわりに
2010年01月24日掲載