第5回日韓NGO湿地フォーラム、共同声明を採択して閉幕
2010年3月26日から28日まで、東京の在日本韓国YMCAアジア青少年センターで開催された、第5回日韓NGO湿地フォーラム(主催:ラムサール・ネットワーク日本/韓国NGOネットワーク)は、以下の共同声明を採択して閉幕しました。
2010年3月28日
第5回日韓NGO湿地フォーラム共同声明
ラムサール条約、生物多様性条約の精神と決議に基づき、
湿地の大規模開発を根本的に見直し、創造的な保全と再生を求める
ラムサール・ネットワーク日本
韓国湿地NGOネットワーク
2010年3月26日から28日まで、東京の在日本韓国YMCAアジア青少年センターにおいて、第5回日韓NGO湿地フォーラムが開催された。
第1回から第3回までのNGO湿地フォーラムは2008年10月の第10回ラムサール条約会議(チャンウォン市)を目標に行われ、第4回は同条約会議の総括、そして第5回フォーラムは2010年10月の第10回生物多様性条約会議(名古屋市)を目標に行われている。これは、この二つの条約が湿地を保護する上で深く関連しているためであり、私たちは、湿地保護を国際条約の視点で考え行動することを目指しているからである。
また、フォーラムでは、毎回、開発事業で破壊される重要湿地(ホット・スポット)について報告し、情報を共有し、保全対策と協働の方法を探ってきた。
今回の3日間にわたるフォーラムでは、生物多様性条約会議への対応といくつかのホット・スポットについて議論され、特に、以下の事項が強調された。
- 生物多様性条約会議(CBD/COP10)は、湿地の生物多様性を保全し持続的に利用していく上で重要な国際会議であり、日本と韓国の政府、地方自治体、環境保護団体、関係する市民は、その目的を理解し、協力して準備を行い、条約会議に積極的に参加して意見を表明することが期待される。また、CBD/COP10の決議は、国内で重要視され政策として実現されるべきである。
- CBD/COP10において、日韓の湿地保護NGOは、ラムサールCOP10における決議X.31を発展させたエコトーンとしての水田生態系の生物多様性を活かす決議案や条約の新しい戦略の実施を世界のあらゆるセクターが支援することを提案する国連生物多様性の10年などの決議案を積極的に支持して実現させること、世界湿地ネットワーク(WWN)およびその他のNGO会議を成功させること、湿地の生物多様性保全に貢献するためにサイド・イベント、ブース展示を行うことにおいて、密接に協働することを確認した。
- CBD/COP10での水田の生物多様性に関する決議案については、日本政府と韓国政府が協力して提案し、採択に向けて努力することを大いに期待するとともに、湿地NGOとしてできるだけの支援を行う。
- 韓国が議長を務めた第10回ラムサール条約締約国会議が、「チャンウォン宣言文」と「水田決議」を採択するなど、湿地保護分野で少なくない前進を示したにもかかわらず、韓国政府は、韓国の生物多様性に深刻な脅威を与える各種の開発計画を主導している。特に名前を変えただけの大運河事業との疑惑が持たれている4大河川事業は、韓半島の固有種と渡り鳥の棲息地を破壊し、川の姿を根本から変えている。また、黄海地域の潮力発電所建設計画、ソンド干潟の埋め立て、セマングム干拓事業、ナクトンガン河口の新空港建設など、いまだに進められている大規模開発計画は、韓国のみならず東アジア全体の生物多様性の維持に多大な脅威を与えている。私たちは韓国政府のこのような開発計画に対して深い憂慮を示し、ラムサール条約常設委員会議長国として韓国政府が模範を示すことを再度要求する。このような日韓両国のNGOの憂慮にもかかわらず、湿地を破壊する事業が続けて推し進められれば、2010年10月に日本の名古屋で開催される第10回生物多様性条約締約国会議で韓国政府は国際的な非難を招くことになるだろう。
- 日本でも、韓国と同様に湿地の開発が進んでいる。今回のフォーラムでは、大きな問題となっている沖縄泡瀬干潟、有明海諫早湾、瀬戸内海上関、吉野川河口域、東京湾三番瀬、霞ヶ浦、三浦半島北川湿地から開発と保全に関する問題が報告された。特に、諫早湾では潮受堤防排水門の開門を早急に実施するべきであり、泡瀬干潟では、高裁判決に従い、新たな開発計画を断念し、既設の堤防の撤去など、自然再生に取り組むべきである。また、上関では中国電力の原発建設を中止し、豊かな漁業資源と生物多様性を保全するべきである。北川湿地について京浜急行電鉄は残土処分場建設計画を見直し、自然環境の持続的な活用に転換するべきである。吉野川河口域では四国横断自動車道計画を見直し、三番瀬はラムサール登録を急ぐべきである。霞ヶ浦では冬期湛水を見直し、「市民型公共事業」を支援するべきである。
以上、第5回日韓NGO湿地フォーラムの議論をもとに、特に上記の件について、日韓両国政府、関係機関、関係者の理解と協力を求めるために、この声明を発表する。
2010年04月01日掲載