諫早湾排水門の早期開門を求める共同声明

 ラムサール・ネットワーク日本、日本自然保護協会、WWFジャパン、日本野鳥の会は5月24日、赤松大臣に宛てて「諫早湾干拓事業潮受堤防排水門の早期開門を求める共同声明」を提出し、同日、農水省記者クラブで会見を行いました。記者会見にはラムサール・ネットワーク日本から菅波完さん、日本野鳥の会から古南幸弘さん、日本自然保護協会から大野正人さんが参加して、開門のためのアセスで時間を浪費することなく、早期の開門を実施することの重要性を訴えました。



2010年5月24日

農林水産大臣 赤松 広隆 様

諫早湾干拓事業潮受堤防排水門の早期開門を求める共同声明

 1997年4月に諫早湾干拓事業の潮受堤防が締め切られて,すでに13年が経過しました。
 この間,諫早湾の干潟・浅海域は失われ,わが国有数の生物多様性の宝庫であり,沿岸漁業の重要な漁場であった有明海では,「有明海異変」と呼ばれる環境破壊のため,不漁による深刻な漁業被害が続いています。多くの漁民が漁業を諦め,自殺にまで追い込まれる漁民も後を絶ちません。漁業で成り立ってきた地域社会も,いまや崩壊の淵に立たされています。
 今日の有明海の事態は,生物多様性を保全することの重要性と,これを破壊することにより豊かな自然からの恵みを失うことの愚かさを,わたしたちに改めて厳しく示しています。宝の海と呼ばれた豊かな有明海を取り戻すためには,有明海の潮汐・潮流と,諫早湾の干潟・浅海域をできるだけ復活させることが必要で,排水門開門はその第一歩となる重要なステップです。
 生物多様性の保全は,いまや,国際的に重要な地球環境の課題です。本年は国連の国際生物多様性年であり,また,10月には名古屋で生物多様性条約第10回締約国会議が開催されます。議長国日本の生物多様性保全の取り組みに,世界の目が注がれています。
 諫早湾干拓事業潮受堤防排水門の開門に向けた最終的な判断は,そのような中で下されようとしています。
 わたしたちは,日本政府が生物多様性条約締約国会議の議長国にふさわしく,早期開門の英断を下すことによって,破壊から再生へ,有明海の環境をかつての自然の恵み豊かな生物多様性の海へと歴史的に転換させる決意を,世界に向かって示されることを,心から期待してやみません。

                        ラムサール・ネットワーク日本
                        財団法人日本自然保護協会
                        財団法人世界自然保護基金ジャパン
                        財団法人日本野鳥の会

2010年05月27日掲載