三番瀬のラムサール登録に関する意見書を千葉県に提出
ラムサール・ネットワーク日本(ラムネットJ)は2010年6月25日、下記(上段)の三番瀬のラムサール条約湿地登録の推進に関する意見書をWWFジャパンと共同で、千葉県に提出しました。また、三番瀬のラムサール条約登録を実現する会など8団体も同日、下記(下段)の要望書を千葉県知事宛に提出し、ラムネットJと共同で記者発表を行いました。
2010年6月25日
千葉県三番瀬のラムサール条約湿地登録の推進について
財団法人 世界自然保護基金(WWF)ジャパン
NPO法人 ラムサール・ネットワーク日本
私たちは、千葉県による三番瀬再生会議やそのワーキンググループ等の活動を高く評価しています。また、ラムサール条約湿地登録に関して、三番瀬全域の登録が望まれるが、それが進まない場合、船橋地区を先行して登録するという考え方を支持します。
千葉県の三番瀬は、東京湾奥部に位置し、干潟や藻場、カキ礁、浅海域などからなる生物多様性に富んだ海域です。東京湾岸では、埋立等により、1945年から2005年までの60年間に9,450ヘクタールから1,640ヘクタールへと干潟面積が減少し、残存干潟はわずか17パーセントにすぎません。そのため、水深1メートル未満の浅海域が約1,200ヘクタールもある三番瀬は、東京湾では、自然環境および生物・漁業資源を保全していく上で、たいへん重要な海域となっています。
したがって、千葉県が、住民や漁業者をはじめとする利害関係者、環境団体、専門家等の参加を得て「三番瀬再生計画検討会議」、その後継組織の「三番瀬再生会議」および関連する会議、ワーキンググループ等を長年にわたって継続していることを、私たちは高く評価しています。まさに、情報を公開し、市民の参加を得て、合意形成を図り、湿地の保全と賢明な利用を実現するというラムサール条約の目標に向かって具体的な活動を実践していると言えます。
三番瀬再生会議では、ラムサール条約湿地登録についても議論されており、私たちは、再生会議のひとつの成果として、できるだけ早い機会に登録されることを強く期待しています。もちろん、ラムサール条約湿地登録は最終目標ではなく、干潟と浅海域が保全され、持続可能な漁業が行われるなど、賢明な利用のための手段であり、保全と利用の筋道をつけるための登録となります。
ラムサール条約では、いろいろな決議・勧告が採択されています。三番瀬のような干潟、浅海域に関するものとしては、(1)アジア太平洋地域における渡り性水鳥保全に関する多国間協力(勧告VI.4ブリスベーン1996)、(2)潮間帯湿地の保全と賢明な利用(決議VII.21サンホセ1999)、(3)統合的沿岸域管理に湿地の問題を組み込むための原則およびガイドライン(決議VIII.4バレンシア2002)、(4)湿地再生の原則とガイドライン(決議VIII.16バレンシア2002)、(5)ラムサール条約と漁業資源の保全、生産、及び持続可能な利用(決議IX.4カンパラ2005)などがあります。
これらの決議・勧告のキーワードは、潮間帯(干潟)と漁業資源および渡り鳥の保全、湿地(干潟)の再生、統合的沿岸域管理(干潟・浅海域、漁業、防災、港湾、製造、流通などの総合対策)であり、まさに、東京湾と三番瀬の将来像にふさわしい考え方と言えるでしょう。
2012年には、ルーマニアにおいて第11回ラムサール条約締約国会議が開催されます。登録は締約国会議時に限られているわけではありませんが、私たちは、この会議時における登録を目指してロードマップを作成するという考え方を支持します。また、登録の範囲は三番瀬全域が望まれますが、もし、それが困難であるならば、合意形成が可能な範囲すなわち船橋地域の登録を先行するという考え方に賛同します。
東京湾奥部では、すでに「谷津干潟」がラムサール条約湿地に登録され(1993年)、谷津干潟自然観察センターを中心に、野鳥観察など多様な活動が行われています。船橋地域の登録は、それに続く登録と位置づけられ、近い将来、合意形成ができれば、市川、浦安地域、さらに行徳湿地が追加登録され、中長期的には、東京湾岸の他の干潟や湿地についても、ラムサール条約湿地ネットワークを形成し、保全と賢明な利用が図られることが期待されます。
なお、船橋地域の登録に際しては、漁業資源の保全、再生と持続可能な利用を目標とするべきと考えます。生物多様性の豊かな干潟や藻場、浅海域は、魚介類の生産の場としても重要であり、漁業資源が持続的であれば、他の生物相も維持される可能性が高いからです。また、大都市の海岸は市民の憩いの場所として、バード・ウォッチングや環境教育、散歩や潮干狩り等に利用されていることから、これらの市民活動を推進しながらも過剰利用となることがないように、適正な利用を図ることを目標にするべきと考えます。
以上、三番瀬のラムサール条約湿地登録について、私たちの見解を示しましたので、関係者の皆さまのご理解をお願いいたします。
2010年6月25日
千葉県知事 森田健作様
三番瀬のラムサール条約登録を実現する会
共同代表 相澤友雄
田久保晴孝
三番瀬を守る署名ネットワーク代表
田久保 晴孝
千葉干潟を守る会 代表 大浜 清
市川三番瀬を守る会 会長 秋山 胖
千葉自然保護連合 代表 牛野くみ子
自然と文化研究会Theかもめ 佐藤聰子
千葉県野鳥の会 会長 富谷健三
第十一回「ラムサール条約締約国会議」で三番瀬の登録実現を
私たちは、東京湾に僅かに残された干潟・浅海域「三番瀬」の保全・再生に取り組んでいる団体です。
2002年に発足した「三番瀬再生計画検討会議」は、三番瀬の再生の制度的保証としてラムサール条約登録実現を掲げました。
私たちは、三番瀬の保全・再生の第一歩として、このラムサール条約登録実現のために2004年以来県民・市民に署名を訴え、この間に12万に達する署名を集め知事はじめ関係行政機関などに早期登録を働きかけてきました。
しかし、今日に至るまで残念ながらこの署名に込められた登録実現を求める県民・市民の声は、実現していません。
三番瀬は、東京近郊で潮干狩りが出来、ノリの養殖など都市漁業が行われ、地産地消で地球温暖化防止の役割を担い、同時に食料自給率アップにも役立ち、稚魚の揺籃の場所として東京湾漁業にとって欠かせない海域です。
知事の諮問期間である「三番瀬再生会議」では、これまでも何度も委員から県側へ早期にラムサール条約登録実現を求める要望・意見が出されてきました。
2009年の再生会議は、3つのワーキング・グループを発足させました。その一つである「ラムサール条約登録」問題を検討するグループでの検討の結果、『三番瀬を2012年ルーマニアでの第11回ラムサール条約締約国会議に登録の実現を図る。もし、三番瀬全体の登録が無理な場合は、船橋海域を優先的に登録を図る。』とのことで合意したときいています。
三番瀬は、現在環境省のラムサール条約候補湿地54箇所に登録されています。また、ラムサール条約登録条件である9つの国際的基準のうち5つの条件を満たしています。しかし、日本国内での登録条件は、「地元自治体等から登録への賛意が得られること。」と定めています。浦安市、市川市などが登録自体に賛成しながらも、それぞれの事情により現時点での登録を時期尚早としていてます。
- 船橋市議会は、2004年「三番瀬のラムサール条約登録湿地指定促進に関する決議について」を全会一致で可決しています。
- 藤代市長は、前回と昨年6月の市長選挙で三番瀬のラムサール条約登録を選挙公約に掲げました。
- 浦安、市川、船橋各市で構成される「京葉広域行政連絡協議会」が、今年1月の森田知事への要望書で、三番瀬のラムサール条約登録を促進を求めています。
- さらに、船橋市漁業協同組合は、2008年3月に「三番瀬のラムサール条約登録促進」決議をしました。また、船橋観光協会も賛成しています。
- 三番瀬は、千葉県が1996年から3年かけて実施した「補足調査」によれば、三番瀬では鳥類89種、動植物プランクトン302種、ゴカイなど底生生物155種、魚類101種、合計647種の生物が確認されています。2002年から2005年までの間に、180種の野鳥が観察されています。
以上から明らかなように三番瀬は、まさに生物多様性に富んだ豊かな海です。船橋海域は三番瀬の三分の二以上に当たり環境省が求める登録に必要な基本的な条件を十分に満たしています。
2012年ルーマニアで開催される「第十一回締約国会議」で三番瀬の登録への道が開かれること、このことが無理な場合は、当面条件が整っている船橋海域を先行して登録を実現するよう、知事としてこれまで以上にご尽力くださいますよう心よりお願い申し上げます。
以上
2010年06月27日掲載