生物多様性と湿地保全(3) 生物多様性条約COP10と水田関連決議
─水田関連決議を通して見たCBD SBSTTA会合─
ラムネットJ共同代表/水田部会長 呉地正行
■ナイロビでのSBSTTAで日本政府が水田関連決議を提案
2010年5月10〜21日にケニヤのナイロビにある国連環境計画(UNEP)を会場に、CBD-COP10に向けた実務者会議となる第14回科学技術助言補助機関会合(SBSTTA 14)が開催され、ラムネットJから柏木実さん、岩渕成紀さん、呉地が参加しました。この会合は名古屋で開催されるCBD-COP10に提案される決議内容を審議し、その結果を議長勧告としてCOP10へ受け渡す重要な会議です。
ラムネットJ水田部会は、CBD-COP10での水田関連決議採択のために、農水、環境、国交省と水田決議円卓会議準備会をこれまで8回開催し、政府案策定を支援してきましたが、その決議案もこの会合で審議されました。
13日に、議題4・1・1の「農業生物多様性決議IX/1への追跡確認事項」のところで、日本政府(農水省)が発言し、日本政府原案「農業生物多様性と水田」を読み上げ、これを農業生物多様性決議に組み込むよう提案しました。
SBSTTA会合会場
■ラムネットJなど日本のNGOも水田決議の支持をアピール
この提案に対し、他の締約国から特に支持発言がなく、呉地からNGOとして、この提案を強く支持する発言をしました。これを受け、議長が締約国に対して支持の有無を諮り、複数の締約国とNGOが支持し、日本提案は受け入れられ、その議論が始まりました。また同日の昼、この決議案を支持するサイドイベントをラムネットJ/CBD市民ネットが主催し、柏木さんの司会の下に、関係者以外に日本政府(農水省)とFAO(国連食糧農業機関)からも講演者を招き、開催しました。
これらの取り組みは、会合のハイライトを紹介する、IISDのSBSTTA関連のホームページに写真と記事で紹介されました。またFAO主催のGIAHS(世界農業遺産)サイドイベントにも参加し、岩渕さんが講演を行いました。
後日、この提案に対する審議が行われ、ベルギー政府から修正意見が出され、日本、ベルギー両政府と私たちで意見調整後、両国合意の修正案を「農業生態系の評価」としてまとめ、最終日の全体会で「農業における生物多様性:締約国会議決定事項IX/1の要請に対する追跡確認事項」の、議長勧告の一部として、採択されました。
CBD-COP10に向けた水田関連決議の取り組みの目的の一つは、2008年のラムサールCOP10で日韓ラムネットが支援し採択されたラムサール水田決議の機能強化です。CBDは生物多様国家戦略という枠組でその実施を担保しています。日本の次期国家戦略にこの水田関連項目が組み込まれれば、全ての水田でラムサール水田決議の理念を具体化する法的な支えにもなります。NGOの当初案に比べ、内容はかなり目減りしてしまいましたが、国際関連機関とのパイプが太くなったことと、CBD-COP10での採択のめどが立ったことは大きな成果と考えています。
ラムネットJからの「水田決議支援」発言
ケニヤでの「田んぼのグリーンウエーブ」参加者(ムエア地区水田)
(写真:今井麻希子)
(ラムネットJニュースレターVol.4より転載)
2010年08月21日掲載