レポート:東日本大震災 現地NGOによる緊急報告会

─地域の復興と湿地─(湿地のグリーンウェイブ・イベント)

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左から、呉地正行さん、岩渕成紀さん、新妻香織さん

 3月11日、東北地方太平洋沖で発生した大地震と津波、その後の原発事故は多くの被害を出し、私たちの暮らしを直撃しました。今回の震災では、地震・津波で破壊された地域の復興、広範囲に及ぶ放射能被害への対策が緊急の課題としてつきつけられています。
 4月30日、ラムネットJでは東京の地球環境パートナーシッププラザにて緊急報告会を開催しました。現地から参加した4人の報告をご紹介します。なお、この報告会はこちらで動画も公開しています。(宇田川飛鳥、矢嶋悟)

■呉地正行さん(宮城県栗原市)日本雁を保護する会/ラムネットJ共同代表

 地震当日は北海道におり稚内から羽田空港へ向かう予定でしたが、飛行機は途中で折り返し内陸の被害情報が伝わらないまま、東京・新潟を経由して15日に自宅に到着できました。その後、崩れた母屋や蔵を解体するなどの作業を行っています。自宅周辺では屋根瓦の家屋が重みで潰れたり土蔵が崩れたりし、「要注意」「立ち入り禁止」の札が貼られています。地盤沈下で電信柱が傾きマンホールも盛り上がったままです。
 4月7日には激しい余震があり、それによって付近の家屋が再度倒壊しました。4月19日には千葉から来たサポーターが家の片づけを手伝ってくれ、また各地の皆さんからの救援物資が届いておりとても感謝しています。

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井戸の屋根が倒れ、土蔵が崩れかかっている栗原市の自宅の様子(呉地)

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気仙沼市大谷地区のふゆみずたんぼの 復元に向けて、土壌の調査を行う(岩渕)

■岩渕成紀さん(宮城県大崎市)NPO法人田んぼ/ラムネットJ理事

 今回の津波は地元の人びとの予想をはるかに越える高さで、津波で更地になった町では人びとが呆然と立ち尽くしていました。現在、NPO法人田んぼは「RQ市民災害救助センター」のサテライトステーションとなり復興への活動を進めています。
 小規模な避難所や自宅二階に避難して暮らしている「被災者マイノリティー」へ物資を届ける活動や、「7つの復興プロジェクト」が立ち上がりました。支援物資の提供を呼びかけた小学生の行動をきっかけにした「さと・あこ教育復興」、高校生による「ツイッターの情報マッチング」、仮設ではない「第三世代の復興住宅」、生物多様性を活かした「流域ペレット」、「田んぼの復元」、税金に頼らない「東北サイコウ銀行」、「心と体の癒し」の7プロジェクトです。植物や生き物は田んぼの汚染物質を取り除く存在であり、「究極の田んぼが日本を救う」をスローガンに取り組みを続けています。

■新妻香織さん(福島県相馬市)はぜっこ倶楽部/ラムネットJ理事

 3月11日の津波で松川浦にほど近い故郷の町も実家の建物も消えました。水けむりがもうもうと立ち、家がメリメリと押し流されてくる音は忘れられません。4月20日、はぜっこ倶楽部は東北大学・福島大学の専門家らと松川浦に入りました。生きものの楽園だった鵜の尾岬は砂洲が大きく寸断され外洋とつながってしまいました。干潟の砂もアマモ場も葦原も全部津波に持っていかれ、生物の気配はまったくなくなり、想像を超える破壊に愕然としました。松川浦は今回の津波で干拓する前の明治のころの景色に戻ってしまいました。福島は家や家族や船を奪われただけではなく、原発事故で農地も魚も観光客も奪われ、立ち上がれないほどのダメージを受けています。
 それでも最近、干潟にカニの巣穴やカキ礁、葦の芽を発見したり、泥に埋もれた家の堀ゴタツからヤマトオサガニが38日ぶりに生きて救出され、「復興への希望」になっています。

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津波で船が打ち上げられ、葦原が泥で埋まった松川浦の野崎湿地(新妻)

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原発事故による農地の放射能被害について報告する稲葉さん

■稲葉光國さん(栃木県上三川町)民間稲作研究所

 民間稲作研究所の会員農家は原発20 km圏内に26名、そのうち被害の大きかった6号線地域に6名がおり、5000ベクレルの放射能汚染が確認できたところは作付けを禁止されています。有機農作物は3年以上経過しないと認定をもらえず、既に一般の農家は稲づくりも始まっており転換調整が十分にできていない状況で、今後のコメ不足を心配しています。農家は作付けできなかったら何もできません。
 そこで発想を転換し、汚染度の高いところで育つ作物はヨウ素を吸収し土壌汚染を解消することに注目して、汚染程度によって雑草、ナタネ、ヒマワリ、イネと作付けし除染することを提言します。子実は収穫した後、油として活用でき、茎・葉・根は収穫した後、乾燥させて火力発電所の燃料に活用できます。灰は融解スラグにし低濃度放射性廃棄物として東電が回収。全部刈り取って焼却すれば土壌の回復になる技術です。世界初の試みですが日本にはまだ幾つもの原発があるからこそ、取り組まなければなりません。
(ラムネットJニュースレターVol.6より転載)

2011年07月29日掲載