諫早湾の開門実現に向けて

諫早干潟緊急救済東京事務所/ラムネットJ 陣内隆之

 昨年12月、福岡高裁は諫早湾の開門を求める判決を下し、菅内閣が上告を見送ったことから、2013年12月までに諫早湾の水門が開放されることが確定しました。これに対し、これまで干拓事業を推進してきた長崎県をはじめとする関係団体は、開門反対の姿勢を崩さず、4月には開門阻止訴訟を起こしました。
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 農業と漁業が共存する持続可能な社会の実現のためには、事実に基づいた対話が必要です。そこでラムネットJでは、WWFジャパンの委託を受け、有明訴訟弁護団などと共同で「諫早湾開門 本当に大丈夫なの?」という、開門に対する疑問に答えるパンフレット(左写真:PDFのダウンロードはこちら)を製作しました。これまでに諫早市の干拓農地をはじめ広く市民に配布しています。
 そしてまた、今年の干潟を守る日シンポジウムは、湿地のグリーンウェイブ参加イベントとして、「諫早湾開門〜農漁共存に向けて対話を求めて」と題して、4月16日に諫早市で開催しました。
 このシンポでは、開門により、ある程度の干潟再生が期待できること、段階的な開門方法をとれば、防災や農漁業に支障なく実施できることなどが報告されました。
 特に、有明訴訟弁護団事務局長の堀良一さん(ラムネットJ共同代表)による最近の諫早問題を解説は──①判決確定により開門は国の法的義務となった。②開門阻止訴訟の争点はこれまでの裁判で議論され尽くしたものであり、また国の法的義務の履行が違法性を有するはずはなく、原告勝訴はあり得ない。③農水省は、漁業被害を訴え開門を求めてきた漁民ばかりでなく、開門によって農業や防災が台なしになると地元住民の不安をあおり欺いてきた。農水省は、双方に謝罪しなければならない。④農水省は5月末に出す開門アセスの素案を待ってからとして、具体的な開門方法について何も示さなかった。開門アセスのスキームでは法的義務を果たすのに間に合わず、国は農業用水や防災対策など安全・安心な開門の具体的方策を早急に示さなければならない。⑤諫早湾内漁民を原告とする即時開門を求める裁判の判決が、国の要請を受けて3月から6月27日に延期されたが、開門アセス素案にどれだけ具体性があるかを長崎地裁も注目している。この裁判の追加提訴は問題解決の先延ばしは許さないという漁民の怒りであり、国が不誠実な対応を改めないなら、今後も原告は増えていくだろう。──など、私たちに開門への期待と勇気を与えるものでした。
 長良川河口堰のゲート開放をはじめ、開発の危機から湿地を救い守る全国の活動に確かな道筋を指し示すためにも、私たちは諫早湾の開門を確実に実現しなければなりません。諫早湾では5月半ばから「浮遊物」が大発生しており、今年も有明海の環境異変や漁業被害が懸念されます。開門アセス素案の内容を見て、早期開門を求めて農水省や政治への働きかけを強めていきたいと思います。

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2011年5月に有明海で発生した「浮遊物」

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「浮遊物」で汚れた漁網(写真提供:坂田輝行)

(ラムネットJニュースレターVol.6より転載)

2011年07月29日掲載