泡瀬干潟・浅海域の埋め立て工事再開への抗議声明
沖縄県の泡瀬干潟の埋め立て工事が2011年10月14日に再開されたことに対し、ラムサール・ネットワーク日本では以下の抗議声明を発表し、10月17日に国や沖縄県、沖縄市に送付しました。
内閣府・沖縄担当大臣 川端達夫 様
沖縄総合事務局長 槌谷裕司 様
沖縄県知事 仲井眞弘多 様
沖縄市長 東門美津子 様
泡瀬干潟・浅海域の埋立工事再開に抗議する
NPO法人 ラムサール・ネットワーク日本
沖縄総合事務局は14日、中城湾港泡瀬地区沖合い埋め立て(東部海浜開発)事業を再開した。報道によれば、工事再開の理由について同局は、9月に開かれた環境監視委員会で委員から指摘された調査項目の追加などについて委員や環境調査を委託する業者らと調整した結果、「委員の皆さんの了解を得て調査計画がある程度固まったため」としている。しかし、環境監視委員会の了解が工事再開のゴーサインに理由付けられることには、全く正当性がない。なぜならば、環境監視委員会は、これまでも事業によって泡瀬干潟・浅海域の環境が激変しているにもかかわらず、これらを無視し、「事業者の報告、今後の対策」を承認し、事業の監視ではなく「事業推進の追認機関」になってきたからである。
そもそも、この事業は2009年10月に「経済的合理性がなく、公金支出は認められない」という判決が確定したものである。判決では新計画についても「相当程度に手堅い検証が必要」としている。にもかかわらず、新計画案に妥当性があるかどうかの合意形成が計られないままに、司法判断を無視して行政府の独善的な解釈で工事を強行することは、法治国家として許されない暴挙である。新計画案も基本的には旧案と同様な性質の内容であり経済的合理性がない。世論調査によれば、新計画案についても沖縄市民の多くは賛成していない。
私たちは、
- 沖縄市の新たな土地利用計画に経済的合理性はない。
- 新計画は災害防止対策がない。
- 新港地区東埠頭浚渫土砂処分場造成としての泡瀬埋立に緊急性、合理性はない。
- 埋立再開で貴重な自然環境が破壊されることは、国際社会での責務に反する。
- 新政権は、民主的手続きを無視した再開決定を撤回し、泡瀬干潟埋立中止の公約を守れ。
との観点から、工事再開を行わないよう、川端達夫・沖縄担当大臣に要請したばかりである。中でも、生物多様性条約会議の議長国として「愛知ターゲット」を採択したその足下での工事再開は、国際社会への重大な約束違反である。来年の第11回ラムサール条約会議に向けた日本政府の国別報告書案においては、「また、沖縄県の泡瀬干潟において、人工島を作る大規模な埋立計画が進んでいる等、一部において生態学的特徴の部分的な喪失が懸念されている。」と明記されている。
これほど多くの問題や懸念が指摘されている中で、工事再開を急ぐ理由がどこにあるのだろうか。新たな埋立事業の必要性、妥当性、正当性については、現在裁判で争われている最中でもある。工事を強行し既成事実化していくことは決して許されない暴挙である。私たちは、再開した中城湾港泡瀬地区埋立事業の工事を直ちに中断すること、そして事業の中止を強く求める。
2011年10月18日掲載