辺野古アセス評価書をめぐる動き
ラムネットJ共同代表 花輪伸一
昨年12月28日の未明に、沖縄防衛局によって、7千ページを超える「辺野古アセス評価書」が沖縄県庁に運び込まれた。この評価書は、事業内容の後出しなど違法性が高く、内容も影響予測や評価が杜撰で非科学的なもので「環境保全上、特段の支障は生じない」という結論は「アワセメント」そのものである。この評価書について、沖縄県アセス審査会は、市民の意見を求め審査会でも10人の発言を認めるという画期的な運営を行った。厳しい審査会意見を受けて、沖縄県知事も「生活環境、自然環境の保全は不可能」という実質的には評価書を否定する意見を出すに到っている。
一方、新聞報道により、このアセスの総額は86億円であり(すべて税金)、アセス会社「いであ」を中心にほぼ4社で独占し(落札率99・2%)、おおくの下請け、孫請けが関与したことが伝えられた。また、この四社には、事業者である防衛省からの天下りが6人もいることも明らかになった。天下り、疑われる談合、そして結論ありきのアワセメントと、辺野古アセスは、その内容だけでなく、事業者とコンサルタントの関係を含めて、まさに最悪のアセスとなっている。
筆者らが呼びかけ人となって3月に開催した「ワースト・アセス・コンテスト」で、辺野古アセスは「大賞」を受賞した。写真提供:ワースト・アセス・コンテスト実行委員会
人間よりはるかに大きな群集を作るアオサンゴ(大浦湾)。写真提供:牧志治
また、那覇地裁では「辺野古アセス裁判」が進行中である。1月から2月にかけて計5日間の証人尋問があり、原告および原告側証人として、地域住民が米軍基地と軍事訓練による危険性、生活環境と自然環境の悪化への深刻な不安と基地建設反対への強い意志を訴えた。沖縄本島の約20%を米軍基地が占有しており、基地による騒音被害や墜落の危険性、軍人軍属の犯罪は、住民にとって大きな重圧としてのしかかっている。一方、専門家は、方法書前の事前調査の実施や事業内容が明らかにされないままアセス手続きが進み、垂直離着陸機オスプレイについては、評価書段階ではじめて導入が明らかにされるなど、多くの違法性があることを指摘した。また、事前調査で、多くの調査機材を海底に設置し、ジュゴンを追い出しておきながら、ジュゴンは基地建設予定海域にいないので影響はないとするなど、非科学的な内容が多く、アセスの名に値しないことを証言した。
アメリカの議会では、辺野古移設は不可能という見方が出ており、予算も大幅に削減されるなど、政策変更の兆しが強くなっているが、日本政府は辺野古にこだわり続けている。しかし、沖縄県の環境保全指針で保全が求められ、環境省のラムサール条約湿地潜在候補地にもなっている辺野古・大浦湾沿岸地域については、環境保全を優先し軍事基地の建設をやめるのは当然のことである。
(ラムネットJニュースレターVol.9より転載)
2012年05月22日掲載