COP11で新たに登録された日本の条約湿地
ラムネットJ共同代表 花輪伸一
COP11では、新たに9か所の登録地が追加され、これで日本のラムサール条約湿地は合計46か所となった。今回の登録で注目されるのは、まず、渡良瀬遊水地(栃木、群馬、茨城、埼玉の4県)と円山川下流域・周辺水田(兵庫県豊岡市)である。この2か所は、鳥獣法だけでなく河川法も保全の担保として使われている。環境省に加えて国交省も大きく関与していることから、将来は他の地域でも重要な河川域や河口域の登録が進むことが期待される。
また、渡良瀬遊水地では20数年におよぶ環境団体の活動があり、豊岡市では行政と市民が一体となってコウノトリの野生復帰に取り組んでいる。このような地域に根ざした活動の成果という意味でも注目される。同様に、かつてはLNG基地として埋め立ての危機にあった中池見湿地(福井県敦賀市)も、市民運動の成果で保全が決まり、今回登録に到ったことは特記できる。
浅海域が広がる有明海では、荒尾干潟(熊本県荒尾市)が登録された。有明海最初の条約湿地である。環境NGOによる渡り鳥フライウェイ・ネットワークへの参加呼びかけに市役所が応じ、それがラムサール登録に発展した。荒尾干潟は漁業生産の場として重要であり、条約登録を生かして地域振興と有明海の再生に役立つような施策の展開が期待される。矢並湿地など東海丘陵湧水湿地(愛知県豊田市)は里山の小さな湿地であり、特有の植生が見られる貴重な場所である。これもNGOの活動の成果である。
今回の登録地は9か所とあまり多くはなかったが、北海道(大沼)から沖縄(与那覇湾)までおよび、高山の雪田草原(立山弥陀ヶ原・大日平)、瀬戸内海(宮島)が含まれるなど広範囲である。今後は、これらの登録地では、住民参加の下に保護管理計画が立てられ、賢い利用が行われることが必要である。さらに、環境省の「潜在候補地リスト」の中から、また、このリストには入っていなくても、緊急に保全が必要な湿地については登録を急ぐべきである。
荒尾干潟のオオソリハシシギ 写真:西村誠
東海丘陵湧水湿地群(恩真寺湿地)のシデコブシ 写真:(公財)日本野鳥の会
(ラムネットJニュースレターVol.10より転載)
2013年02月18日掲載