ラムサール登録から20周年を迎えた谷津干潟
谷津干潟自然観察センター指定管理者
(社)アーバンネイチャーマネジメントサービス
芝原達也(CEPA活動コーディネーター)
2013年6月10日、谷津干潟はラムサール条約の登録から20年経ちます。
改めて、埋め立ての危機を救うために干潟の保護運動に関わった多くの方々に敬意を表したいと思います。東京湾の干潟の9割が消え、 今という時代に谷津干潟が種火のように生き続いていることは極めて重要なことと感じています。
観察や学習、交流の拠点となる谷津干潟自然観察センター
■谷津干潟の現状と課題
さて、ラムサール条約に登録されてからの"その後"ですが、登録された頃からアオサという緑色の海藻が目立ち始め、2000年以降は干潟の全域を覆うようになりました。夏場には大量のアオサが枯れて、腐敗による悪臭、ゴカイや二枚貝が斃死する現象が起きます。
渡り鳥は、シギやチドリの主な数を占めるハマシギが登録時の3分の1に減り、現在は1000羽の群れが見られれば多いと感じる程です。シロチドリは、1970年代には3000羽が飛来していましたが、埋め立て地の開発も進み現在では十数羽に減りました。
つまり、登録時にすでに環境や鳥の数に変化が表われていたと考えられます。さらに、 秋口には、東京湾で発生した貧酸素の青潮が1週間続くことがあり、登録時には見つかっていない外来の二枚貝、ホンビノスが増えています。
課題は、干潟の保全です。現在、環境省によって、悪臭の原因となるアオサ対策とシギやチドリの餌場環境の改善を目的とする谷津鳥獣保護区保全事業が実施されており、成果が待たれます。
そして、もう一つ重要なのは、谷津干潟を保全していこう、という世論の支持です。条約への登録はゴールではありません。湿地も干潟も保護区に指定しただけで保全されるとは限りません。社会の財産として保全するには、地元住民に愛され、国民の支持がなければ、存続はできないと思います。
アオサという海藻が干潟一面を覆う
1500羽近いハマシギの群れ(2012年4月撮影)
■条約登録20周年記念イベント
現在、習志野市が公募した谷津干潟の日実行委員会によって、20周年を記念するイベントが企画されています。「谷津干潟の日」とは、 習志野市が制定した、谷津干潟がラムサール条約に登録された6月10日を記念日とするもので、毎年この日に近い土日にイベントを開催しています。
20周年を祝う今年は、6月1日・2日(土・日)、8・9日(土・日)と4日間にわたって開催します。最終日に「未来への扉を開こう」と題する記念シンポジウムを予定しており、谷津干潟の"これから"を皆で一緒に考えます。8月には、メッセージを書いた1万枚以上の黄色のハンカチと人の手をつなぎ、干潟の周囲3・5kmを囲むイベント「8・24愛で包もう谷津干潟」、10月には、アオサの活用の可能性について考えるイベント「アオサについて考える集い」が干潟の日の一環で開催されます。
これらのイベントは、単に衆目を集めるだけでなく、干潟への思いを確かめ、これからの谷津干潟のあり方を考え、誰もが保全に参加する場をつくることを狙いとするものです。谷津干潟は、20周年を新たなスタートラインとし、首都圏にある登録地として、また、急激な開発が進むアジアの登録地として、干潟の保全とワイズユースを追求し、その取り組みを発信していきたいと思います。
(ラムネットJニュースレターVol.12より転載)
2013年04月23日掲載