辺野古の海に米軍基地はいらない

ラムネットJ共同代表 花輪伸一

■辺野古・大浦湾の自然
 沖縄県名護市の太平洋側の海岸線は、ふたつの漁港、キャンプ・シュワブの一部と県道の護岸以外は自然海岸で、砂浜、岩場、島や岩礁、干潟、マングローブ、河口域など多様性に富んだ自然の海辺が続いています。沖にはリーフ(サンゴ礁)が連なり、辺野古や嘉陽にはイノー(礁池という浅い海)が広がっています。
 イノーにはリュウキュウアマモ、リュウキュウスガモなどの海草藻場があり、日本では最も絶滅のおそれのある哺乳類のジュゴンの採食場所になっています。沖縄島では辺野古の藻場が最大の面積で、ジュゴンにとっては一番大切な場所です。
 大浦湾の最深部は65mもありますが、浅場には巨大で珍しいアオサンゴ群集、ハマサンゴ群集があり、いろいろな種類のサンゴがみられます。また、大きなイソギンチャクがあるところでは6種ものクマノミ類が記録されています。岩礁や島では、エリグロアジサシ、ベニアジサシが繁殖しています。砂浜では、ウミガメ類が上陸、産卵しているところがあります。
 大浦湾に流入する大浦川とその河口域は環境省の「ラムサール条約湿地潜在候補地リスト」に記載され、久志、辺野古、キャンプ・シュワブの沿岸は沖縄県の「自然環境の保全に関する指針」によれば、評価ランク1の「自然環境の厳正な保護を図る区域」とされています。

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辺野古・大浦湾の埋立計画(沖縄防衛局埋立申請書より)赤ライン:埋立区域、緑ライン:施行区域

■米軍基地計画と環境アセス、埋立申請
 このように自然環境に恵まれ、生物多様性の宝庫である辺野古・大浦湾では、米軍基地の建設計画があります。宜野湾市の普天間飛行場の移設計画として、1997年に海上ヘリ基地(90ha)、2002年に軍民共用空港(184ha)が計画されました。しかし、これらは住民の反対運動によって実現不可能となり、新たに2006年のキャンプ・シュワブ沿岸案(160ha)が採用され、2013年1月に環境アセス手続きが終了しています。
 この辺野古アセスは、アセス前のボーリング調査準備、水中ビデオ、パッシブソナーなどの設置により、辺野古海域の海底環境やジュゴンに影響与えてからアセス調査が行われるなど非科学的なものでした。また、住民が意見を述べる場のない事業計画の後出しが多く、非民主的なものだったのです。オスプレイの配備は、評価書段階まで隠され、配備後は約束違反の飛行が繰り返されるなど、アセス自体の意義が疑われるものになっています。
 また、沖縄県知事の409件におよぶ意見や専門家、住民等の意見に対しては、必要かつ十分な回答がなされておらず、形骸化した回答や趣旨とずれたものが多く、これでは知事意見にあるように「自然環境と生活環境の保全は不可能」です。
 現在は、このアセス書を添付した「公有水面埋立承認申請書」が、沖縄防衛局から沖縄県知事に提出され、県による審査が進められているところです。住民、市民等の利害関係者の意見は、7月半ばに締め切られ、ラムサール・ネットワーク日本からも埋め立て反対の意見書を提出しています。

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大浦湾のアオサンゴとイソバナモドキ(写真:牧志治)
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建設反対の座り込みが続く辺野古のテント

■今後に向けて
 この埋立申請に対しては、地元の名護市長は名護市議会の議決を得て反対意見を出すことになるでしょう。県知事は、今年の12月頃に埋め立ての適否を判断すると見られています。辺野古・大浦湾の埋め立てと米軍基地建設に反対する住民、市民、平和団体、環境団体は、当面は県知事に埋め立てを承認しないように強く働きかけていくことになります。
 一方、日本に存在する米軍基地の74%が沖縄に集中し、その一環として辺野古に新基地が造られ、またも住民の安全、安心な生活が脅かされようとしていること、また、見返りとして巨額の振興資金が投入され、大部分がハコモノ造りの大規模公共事業に当てられ、沖縄の自然が破壊されていることを忘れてはなりません。日米安保と地位協定を根本的に見直さなければ、解決しない問題です。

ラムネットJニュースレターVol.13より転載)

2013年10月12日掲載