第8回 日韓NGO湿地フォーラム 報告

ラムネットJ事務局 後藤尚味

 韓国湿地NGOネットワーク(KWNN)とラムネットJの共催による、第8回日韓NGO湿地フォーラムが、10月18日〜20日、韓国のプサン大学校で開催されました。
 今回は、来年10月に韓国のピョンチャンで行われる生物多様性条約第12回締約国会議(CBD COP 12)への対応を主なテーマとしたため、日本からはラムネットJだけでなく、国連生物多様性の10年市民ネットワーク(UNDB市民ネット)のメンバーも参加しました。

日韓NGO湿地フォーラム写真1
発表の様子
日韓NGO湿地フォーラム写真1
今回のフォーラムに参加した日韓のNGOのみなさん

●CBD COP 12準備状況と日韓の連携協力
 最初に、韓国の環境部から、CBD COP 12の準備状況の説明があり、正式な準備委員会が2月に立ち上がることが報告されました。名古屋でのCOP10と同様に、市民団体や企業を巻き込んでの開催となるため、COP10の際に日本のNGOが組織したCBD市民ネットワーク(UNDB市民ネットの前身組織)の成果と課題を整理して、経験を共有しました。今回のフォーラム開催を通して、韓国NGOのネットワークが構築できたので、準備委員会が発足次第、活動が始められる状態です。
 さらに、今後の進展状況を共有できるよう、次回のCBD COP12に向けた日韓共同の戦略会議を、にじゅうまるプロジェクトの年次大会に合わせて、来年2月に大阪で開催することになりました。

●韓国での取り組みと課題
 韓国では2002年より長期生態モニタリングが開始され、生物多様性、環境変化、気候変動の3つの調査が行われています。加えて、一般市民による簡易なモニタリングの試みも始まり、2012年からは気候変動と生物多様性の関係と変化を測定するため、市民科学者と研究者によるネットワーク(K-BON)が結成されました。
 その一方で、四大河川事業によって河川の流速が変化し、水生生物の被害と生息環境の悪化が報告されました。また、チェジュ島のカンジョンで進められている海軍基地建設では、環境影響評価の対象から地元のサンゴが抜け落ち、危機にあることなどが報告されました。
 韓国では文化財庁、海洋水産部、環境部が湿地の管理を行っていますが、境界が曖昧なために十分な保護対策がとれないという制度上の問題も指摘されました。

●日本からの発表と共同声明
 日本からは、3.11以後の東北の湿地状況と生態系に配慮した再生エネルギーの検討などについて発表を行いました。田んぼの生物多様性向上10年プロジェクトを紹介し、韓国でのプロジェクト立ち上げを提案しました。また、生物多様性を脅かす遺伝子組み換え作物にかかわる動物実験と南米での健康被害の事例を挙げ、解決策として推進されているアグロエコロジーについて紹介しました。
 最後に、日韓共同の声明書を作成し、両国政府に提出することになりました。

●エクスカーション
 最終日はナクトンガン河口へ行き、湿地エリアに飛来した水鳥を観察した後、河口を一望できる丘の上に建設されたエコセンターを訪問しました。 

ラムネットJニュースレターVol.14より転載)

2013年11月30日掲載