湿地巡り:風蓮湖・春国岱(北海道)
松尾 武芳
風蓮湖は北海道東部、根室湾に面した長さ20km、面積約57km2の汽水湖です。湖口は水深11mあるものの、湖は全体に浅く干潮時には水底から生えるアマモが水面に出るようになります。また湖口に近いところには広い砂干潟が出ます。湖岸は河口や湾に沿ってヨシの湿原や塩性湿地で、湖の周りは薄いながらも林が取り囲んでいます。湖では干潟でアサリやホッキガイを、秋にはアキアジを、冬には氷の下に網を入れてコマイなどを捕る漁業が行われています。
風蓮湖は、野付風蓮道立自然公園に指定されています。また、1980年、日本がラムサール条約に加盟した時、釧路湿原と風蓮湖が条約湿地の登録候補地でした。その当時は地元漁協の理解が得られず風蓮湖は指定されませんでしたが、2005年にやっと登録されました。また、2010年、東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップの参加湿地にも登録されました。
風蓮湖では2010年までに56種類のシギ・チドリ類が記録されています。シーズン最大渡来数は、多い年には5300羽にもなります。ガンカモ類では種類数が34種、年間最大渡来数で10万6000羽にもなります。このように渡り鳥の中継地として重要であることから、環境省の重要生態系モニタリング事業「モニタリングサイト1000」ではシギ・チドリ類とガンカモ類の2つでコアサイトとなっています。
風蓮湖は渡り鳥のみならず、希少種にとっても非常に重要な場所です。2010年当時、タンチョウが約35番い、オジロワシが約18番い営巣していましたし、シマフクロウやクマゲラも棲んでいます。冬には隣の温根沼と会わせて、オオワシが約900羽も越冬します。この数は世界のオオワシの約18%に当たり、世界的にも貴重な場所です。氷下待網漁で漁師の人が市場で売れない魚を網の周りに置いて行く、その魚が主要な食料になっています。漁師の人は自分たちが世界のオオワシの18%を冬の間養っているとは思ってもいませんが、オオワシは古来の漁法にうまくとけこんでいます。
保護区の範囲は、海側の砂州である春国岱と走古丹を除けばほとんど水面だけです。風蓮湖に接する風蓮川河口と西別川河口の広大な湿地をぜひとも保護区に組み入れて、周囲の林とともに保護区にする必要があります。
湖の東に、根室市春国岱原生野鳥公園ネイチャーセンターが、南東岸に道の駅スワン44があり、情報を提供しています。
(ラムネットJニュースレターVol.15より転載)
2014年03月18日掲載