田んぼ10年プロジェクト年次大会「田んぼから始まる!いきもののにぎわい」報告
日時:2月16日(日)13:30〜15:30
場所:大阪府立大学 I-siteなんば カンファレンスルーム C1
主催:IUCN日本委員会/ラムサール・ネットワーク日本
参加者数:30名
1.はじめに
分科会7(関連目標:目標7ほか)では、呉地正行氏(ラムサール・ネットワーク日本)による、愛知目標7に関連する田んぼの生物多様性向上10年プロジェクトの推進状況の紹介のあと、小泉一誠氏(宮城県登米市環境課)、本田耕一氏(農家)、橋部佳紀氏(株式会社アレフ)に、行政、農家、企業が水田生物多様性の維持、向上に取り組んでいる状況を報告してもらい、斉藤光明氏(オリザネット)の司会で、2020年までに田んぼの生物多様性を向上させるために強化しなければならない対応策についてグループディスカッションを行った。
2.愛知ターゲット7の評価(水田目標の評価)
会場からの意見やアンケート結果を踏まえ、水田生物多様性を向上するという観点から愛知目標7を見た評価は、100点満点で、10点。
3.2011年からの進展
- 環境保全型農業直接支援制度が始まった。
- 地方自治体による生物多様性の維持・向上を求めるエコ農業の取り組みが始まった。
- 田んぼの生物多様性向上10年プロジェクトが始まった。
4.日本の課題
- 愛知目標7のねらいと農業関係者の意識のかい離が著しい。
- これまで行われてきた農法、農薬、化学肥料、農地や農業施設等の整備を、どうすれば生物多様性に配慮した農業に転換することができるのかという知見が不足している。
- 生物多様性に配慮した農業を進める支援態勢が十分ではない。
- 民間での取り組みを愛知目標に位置付ける仕組みが弱い。
- 民間での取り組みを評価する仕組みの制度がない。
- 農業農村での取り組み成果が社会的に評価され、経済的な支援となる仕組みが不足している。
- 農業生物多様性を妨げる施策の改善が進んでいない。
- 農業生物多様性を向上させるための行政内での連携が十分でない。
5.愛知目標7を達成するための課題に向けて必要なこと
1)日本政府に対して
- 環境保全型農業直接支援制度に生物多様性を向上する取り組みを数多く取り入れる。
- 環境保全型農業直接支援制度を拡大する。
- 日本型直接支払制度に生物多様性への配慮を組み入れる。
- ほ場整備事業に、生物多様性への配慮を義務付ける。
- 農薬散布と生物多様性への関係を実証する。
- 農協が有機肥料の取り扱いを主流化するよう支援する。
- 「水穂の国」日本の歴史・文化教育を拡充する。
- 省庁間の連携を強化する。
- 愛知目標達成に向けて、地方自治体への働きかけを強化する。
- 農業者と直接接する職員に生物多様性条約、愛知目標をよく伝える。
- テレビやマスコミなどを通した広報活動を拡大する。
- 全国の小中学校での、生物多様性に配慮した稲作体験への取り組みを強化する。
2)他の機関に対して
- 都道府県は、生物多様性に配慮した農業を行う人たちへの奨励措置を実施する。
- 市町村に、生物多様性に配慮した農業を進める担当部署を設置する。
- JAや土地改良事業者等への理解を進める活動を行う。
- 小・中学生を対象とした地域連携型の取り組みや情報発信を進める。
(1)学校と地域住民のコラボ
(2)大都市と近郊都市のコラボ
(3)学校と地域企業のコラボ
3)分科会参加者の取り組み
- 生物多様性に配慮した水田でつくられたお米を積極的に使う。
- 自分が普段食べるお米がどこからきているのか、どう作られているのかに関心を持って選んでいく。
- 田んぼの生物多様性向上10年プロジェクトを、より多くの人に勧める。
6.にじゅうまるプロジェクトに対する提案
- 参加の意義が感じられる、こういう会合は、定期的に開いてほしい。全国集会のほかに地域集会も必要。
- 市民参加による進行管理が行われていない状況なので、にじゅうまるプロジェクトで、できる限りの情報を集めて進行状況をチェックする必要がある。
(報告:斉藤光明)
2014年05月23日掲載