湿地巡り:米子水鳥公園(鳥取県)
米子水鳥公園主任指導員 神谷 要
鳥取県米子市にある米子水鳥公園は、ラムサール登録湿地「中海」の湖岸にあるバード・サンクチュアリです。園内は、広さ17haのつばさ池を中心にヨシ原が取り囲み、そのほとりには野鳥を観察できるネイチャーセンターがあります。冬になると、コハクチョウをはじめ、天然記念物のマガンがねぐらとしているほか、ツクシガモやオナガガモ、キンクロハジロ、ホシハジロなど多くのカモ科鳥類でにぎわいます。そのため、米子水鳥公園は、中海の一部としてラムサール条約に登録されているほか、公園単独で東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップの参加地となっています。
この公園は、もとは農水省の中海干拓淡水化事業の彦名工区として工事が進められている場所でした。そして、そのまま干拓が進められれば農地となってしまうこの場所に、多くの水鳥が集っていました。この様子を見た市民が水鳥を守るための活動を始め、毎週の探鳥会のほか、水鳥の絵画コンクール、一円募金などの活動が行われました。その結果、1992年には米子市が干拓地の一部を買い上げて水鳥公園として整備することになりました。これは、中海干拓淡水化事業全体が中止になるより10年早い決定でした。
現在、米子水鳥公園では、米子市と鳥取県が基金を積んで設立した公益財団法人中海水鳥国際交流基金財団を指定管理者として、来館者への解説や、湿地の保全活動、子供たちへの普及活動などさまざまな事業が進められています。これらの事業の中には、公園設立を求めて活動した市民が中心となって結成された「米子水鳥公園友の会」のメンバーもボランティアとして協力しています。
このように米子水鳥公園では設立の経緯を踏まえ、市民がボランティアとして参画しながら湿地の管理が行われています。
園内から望む大山とコハクチョウ
子供たちへの普及イベント
(ラムネットJニュースレターVol.16より転載)
2014年06月23日掲載