湿地巡り:三方五湖(福井県)

福井県海浜自然センター次長 松村俊幸

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 三方五湖は、福井県若狭町と美浜町にまたがる三方湖、水月湖、菅湖、久々子湖、日向湖の5つの湖からなる湖の総称です。湖の全体像は、レインボーライン(三方五湖有料道路)から梅丈岳山頂に上ると一望できます。幾重にも重なる山並み、5つの湖、リアス式海岸が織りなす360度パノラマは、一見の価値があります。5つの湖は、海とのつながりや流入河川の有無などにより、湖ごとに塩分濃度が異なります。この塩分濃度の違いと山で隔離された地形が、多様な魚類の生息環境と固有な遺伝子を持つ魚類相を育み、平成17年11月、ラムサール条約湿地に指定されました。
 三方五湖がラムサール条約湿地に指定されたことは、湖の自然環境保全対策を見直すきっかけになりました。従来の水質改善対策から、生物多様性の保全や持続可能な利用方法を模索する方向性に舵が切られ始めたのです。平成23年5月には、三方五湖自然再生協議会が設立され、地域住民、研究者、行政が一体となって、三方五湖の自然再生を議論する土台が作られました。現在、協議会は60余りの個人・団体が参画し、外来生物、湖と田んぼのつながり、環境教育など、5つの部会に分かれ、自然再生やワイズユースの推進に取り組んでいます。
 ところで、一般の方は、三方五湖の自然を生物学的なアプローチではなく、景観的な視点で見ることがほとんどです。実はその生物学的な視点で観ることを補っているのが、三方五湖から峠を越えた食見海岸にある福井県海浜自然センターです。当センターは、平成11年に若狭湾国定公園の「海」の普及啓発施設として設立されましたが、十数年を経て、現在は運営の半分を「湖」の普及啓発に費やしています。特に、本年4月、舞鶴若狭自動車道の開通に合わせて館内展示と運営をリニューアルし、館内展示の約半分を三方五湖の生物多様性に割きました。三方五湖を訪れた際には、まずは、「うみ(海湖)」のビジターセンター「福井県海浜自然センター」にお越しください。三方五湖の生き物たちの営みの一端を垣間見ることができます。

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夏場にはヒシが繁茂する三方湖
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三方五湖自然再生協議会の普及啓発活動

ラムネットJニュースレターVol.17より転載)

2014年09月22日掲載