「ひょうご豊岡モデル」が発表された第5回コウノトリ未来国際かいぎ
ラムネットJ理事・事務局長 浅野正富
7月19、20日、豊岡市で第5回コウノトリ未来国際かいぎが開催され、後援団体の一つであるラムサール・ネットワーク日本から柏木実共同代表と私が参加しました。
「未来へ!〜野生復帰のすすめ〜」というテーマで、1965年のコウノトリの人工飼育開始、66年の野生個体絶滅から40年を経た2005年の自然放鳥の成功後、現在では80羽を超える野外個体のうち、国内にとどまらず韓国にまで渡るものが現れるようになった、兵庫県と豊岡市のコウノトリの野生復帰の取り組みを検証し、国内各地、韓国で進められている野生復帰の取り組みの今後を展望する会議でした。
この会議までに、テレビの報道番組でもおなじみの東京都市大学の涌井史郎教授を委員長とするコウノトリ野生復帰検証委員会による「コウノトリ野生復帰に係る取り組みの広がりの分析と評価─コウノトリと共生する地域づくりをすすめる『ひょうご豊岡モデル』」がまとめられ、涌井教授が「野生復帰の検証『ひょうご豊岡モデル』をひも解く」という基調講演を行いました。今回の検証では、「こころ」の問題にまで踏み込んで、「共感」を評価の軸にした分析が行われ、(1)生き物を愛する心(コウノトリをシンボルとした自然の愛情)、(2)郷土を愛する心(豊岡という場所への愛情)、(3)生活の安定を望む思いの3点をより良い暮らしを求める共感のポイントとして、河川分野、農業分野、地域社会分野での取り組みによる施策の広がり、主体のつながりを分析しました。結論として、「ひょうご豊岡モデル」を「地方における自然財を活かした持続可能な地域づくりモデル、心の動きを推進力とした『共感の連鎖』誘発のモデル、『科学』と『行政』と『地域社会』の連携モデル」と表現しています。
豊岡市の中貝宗治市長は、講演の度に必ず「いのちへの共感」という言葉を使いますが、一旦は自然界で絶滅してしまったコウノトリの野生復帰の取り組みが、この「いのちへの共感」という言葉で語られるのを聞いたときに感じる、私たちの「こころ」までが浄化されてくるような感覚自体が「共感の連鎖」なのかもしれません。
ラムサール・ネットワーク日本は、設立時から「水辺の生命(いのち)と暮らしのネットワーク」というサブネームを使っています。私たちの活動においても、豊岡の取り組みに学び、水辺のいのちを守っていく「こころ」を伝え、広く共感の輪を広げていくことの重要性を感じさせられた、2日間の会議でした。
(ラムネットJニュースレターVol.17より転載)
2014年09月22日掲載