ふゆみずたんぼが呼び寄せる人と生きもの

蕪栗沼・周辺水田での雁と雑草との共存をめざす取り組み
蕪栗グリーンファーム 斎藤 肇

 私はラムサール条約湿地「蕪栗沼・周辺水田」に含まれる水田で水田耕作をする専業農家で、10年前にふゆみずたんぼを始めました。そのきっかけは経済的な魅力でしたが、さまざまな方と出会ううちに考えが変わりました。それまで無関心だった田んぼの生きものは、今では経済では語りきれない人生の財産になりました。そしてそれが有機栽培技術を支える底力だと確信しています。ときに「斎藤さんにとって、ふゆみずたんぼとは何ですか?」と聞かれることがありますが、「それは生き方そのものです」と答えています。
 蕪栗沼には毎冬数万羽の雁が渡ってきます。かつては害鳥と思っていましたが、ここでしか見られなくなってしまった雁は地域の資源と考えるようになりました。農家がお米を作るから雁が毎年蕪栗沼にやってきます。私たち農家は雁の雄大な群れと豊かな季節感を日常生活の中で自然に感じることができます。このような関係を次世代に受け渡す責任も感じます。

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コナギの収穫
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コナギ料理を食べる

 7月12日に、「コナギを食べて愛でる会」の一行20数名が我が家へやってきました。半数は、霞が関の農水省や環境省の職員有志、残りの半数は地元の関係者のグループです。コナギは除草剤を使わない水田に生える雑草で、農家からは嫌われています。このコナギを収穫して食べ、一部を鉢植えにして愛でようというのがその目的です。コナギの会の皆さんには、我が家のふゆみずたんぼでコナギを収穫していただき、それを実際に食べていただきました。収穫したコナギは、地元の協力を得て、9種類の「コナギ尽くし」料理に変身しました。これらの料理は、土間にゴザを敷き車座となり意見交換しながらいただきました。どの料理も美味しく、私たち農家では考えもつかない意見や、野菜として十分通用することなどの新たな視点には正直おどろきました。また参加者の皆さんと一緒に厄介者のコナギを何とか資源にしようという共有感も強く感じました。今回のようにさまざまな皆さんが立場を超え知恵を出しあえば、田んぼの生きものをうまく活かした長続きする社会作りができそうだと思いました。

ラムネットJニュースレターVol.17より転載)

2014年09月22日掲載