ダムのない最上小国川の清流を未来に!

最上小国川の清流を守る会/山形県議会議員 草島進一

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特産の松原アユ
 東北、山形県の最上川支流の中で唯一ダムのない支流、最上小国川(流域延長100km)は、アユ、サクラマス、イワナ、ヤマメなどの淡水魚をはじめ、貴重昆虫類、オオタカ、ヤマセミなどの鳥類などが多様に生息する全国有数の生物多様性のホットスポットです。特にアユは特産の松原アユとして知られ、毎週のように友アユ釣りの大会が行われ、年間3万人の釣り人が全国から訪れる清流です。その経済効果は年間22億円と試算されています(近畿大有路研究室調べ)。
 そこに上流域の赤倉温泉街の治水を目的とした穴あきダム(流水型ダム)の建設の計画が持ち上がりました。しかし、1100名を有する小国川漁業協同組合は、沼沢勝善組合長を筆頭に、2006年には、建設反対を決議し、反対を貫いていました。
 私たちは2003年から活動をはじめ、2010年、最上小国川の清流を守る会を結成。穴あきダムの問題点などを科学的に検証し、問題を指摘し続けてきました。2012年9月15日、会の有志でダム建設差し止めを求める住民訴訟を提訴しました。
 漁協や私たちが反対する中、山形県は2012年10月よりダムの周辺工事を強行。しかし漁業権を持つ漁協が反対しているため、本体工事は進みませんでした。

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釣り人でにぎわう最上小国川
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穴あきダム(島根県増田川ダム)

 山形県は2013年末、10年に1回の漁業権の更新にあたり、「ダム反対のままであれば小国川漁協の漁業権を認めない」と漁業権剥奪の可能性を示し、漁協と8年間決裂していた話し合いの場を無理矢理つくりました。更新はできたものの沼沢組合長は、自分の言動一つによって漁業権を剥奪されるかもしれないという圧力に精神的に追いつめられ、第2回目の協議の直前、2月10日に自死しました。
 山形県はその後の理事会で決めたダム容認派の組合長と結託し、県と漁協の協議の場で、「ダムを容認すれば漁業振興を行う」「ダムをつくってもダムがない川以上の清流を実現する」などと振興プランを提示して漁協のダム容認を迫りました。6月8日の漁協の総代会ではダムやむなしとする決議に対し、賛成57、反対46という結果でした。水産業協同組合法では漁業権の喪失をともなう案件は特別決議で2/3の賛成が必要なため、その決議ではダム容認と法的には認められないにもかかわらず、県は「漁協はダム容認」と扱い、ダムと振興策を強要している状況です。
 県のダム建設の論拠は赤倉温泉地域の治水ですが、赤倉温泉流域内に県がつくった堰により土砂が堆積して洪水の原因を作り出していたことがわかりました。また、県は以前河川改修した際に温泉に影響を与え損害賠償した事件を論拠に、「温泉湯脈に影響するから河床掘削できない」と流布していましたが、県提出の裁判資料により、改修と温泉とは関係がないことがわかりました。
 温泉街の中心部にある旅館が倒産し、周辺全体が老朽化している現状を踏まえれば、河道改修とともに温泉街の再生をはかる、ダムなしの治水対策こそ、治水上の安全をかなえ、流域の環境を守り、さらに温泉街の再生が果たせる三方徳であると、5月に故沼沢組合長の追悼シンポジウムに集った河川工学者、魚類生態学者が結論したところです。
 東北随一のアユやサクラマス踊る清流、最上小国川。「川の力を失ったら漁業振興にならない」と訴え続けていた故沼沢組合長の遺志を継ぎ、次世代に手渡したいと考えています。

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土砂堆積や水害の原因となっている県がつくった堰
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最上小国川の豊かな自然の中で遊ぶ子どもたち
ラムネットJニュースレターVol.17より転載)

2014年09月22日掲載