国に確定判決を守らせ、一日も早い諫早湾の開門を実現するために

ラムネットJ共同代表/よみがえれ!有明訴訟弁護団事務局長 堀 良一

開門しない国の言い訳
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諫早湾の排水門

 矛盾する2つの義務が衝突している現状では身動きがとれない...昨年12月20日に開門確定判決の3年の猶予期限が経過し、いよいよ開門義務の履行が現実のものになっても開門しない国の言い訳がこれです。2つの義務というのは、確定判決の開門義務と昨年11月に長崎地裁が出した開門阻止仮処分の開門禁止義務。
 でも、これはあまりにも身勝手な言い分です。そもそも、開門阻止仮処分の手続きで開門禁止義務を導いたのはいいかげんな国の訴訟対応でした。しかも2つの義務が矛盾・衝突しているのは形の上だけで、内容的には決して矛盾・衝突しているわけではありません。矛盾・衝突は国が万全の準備工事を行えば解消可能です。また、形の上での矛盾・衝突自体も解消する方法もはっきりしています。ところが、国はそのための努力を尽くそうとしていません。
 国は2つの義務を口実に開門をサボタージュしている...これが実態です。

2つの義務の衝突を招いたのは国の責任
 福岡高裁の開門判決が確定しているのに、なぜ長崎地裁は開門禁止命令の仮処分を出したのでしょうか。
 その原因は国の対応にあります。国は福岡高裁の開門判決が確定しても、拘束されるのは開門を命じた判決主文だけで、その根拠となった漁業被害と諫早湾干拓事業との因果関係は認めないという判決無視の態度をとっています。開門阻止仮処分の手続きでも国はそのような立場から、サポーターとして補助参加した漁民側の漁業被害や因果関係に関する主張や証拠にことごとく異議を唱えました。裁判所は異議を鵜呑みにして、漁民側の主張や証拠を無視して出されたのが開門阻止仮処分です。
 2つの義務の衝突は、国の自作自演のたまものといっても過言ではありません。

2つの義務の衝突は形の上だけのもので実際には衝突していない
 国の自作自演によって演出された2つの義務の衝突も、衝突しているのは形の上だけで、実際には「衝突」などと言えるものではありません。
 開門阻止仮処分の開門禁止命令の根拠は、準備工事ができる見通しがない、あるいは、不十分というものです。だとしたら、万全の準備工事をした上で開門するのであれば、開門禁止義務の前提となる根拠がなくなります。万全の準備工事を行うことによって2つの義務の矛盾・衝突は実質的に解消されます。

形の上での義務の衝突も解消できる
 確定判決はもはや手続き上、義務そのものを消滅させることはできません。
 他方、開門禁止義務は仮処分決定上の義務です。この仮処分はまだ地裁レベルのもので、今後、高裁、最高裁と異議の手続きが続きます。また、仮処分はあくまでも本案訴訟の結論が出るまでの仮の措置ですから、今後、地裁、高裁、最高裁と開門阻止判決が出続けないと消え去る運命にあります。
 形の上での義務の衝突は、争う余地が十分に残されているこれらの手続きの上で国が勝訴することで解消できます。万全の準備工事を行った上で、事情変更による仮処分の取り消しを申し立てることも可能です。
 ところが、国はなかなか仮処分への異議申し立てをしませんでした。たまりかねた漁民側が補助参加人の立場から開門禁止仮処分に異議申し立てをしたため、国はしぶしぶこれにつきあっているというのが現状です。

国の開門サボタージュを許さない世論の形成を
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諫早湾開門パンフレットの表紙

 ギロチンと呼ばれた潮受け堤防閉め切りから17年が経過しました。累積する漁業被害の中で、開門はもはや待ったなしです。
 国が確定判決を守らないという憲政史上前例のない暴挙を行っていることに対して、これを許さないだけの力をもった国民世論を形成することが求められています。国に確定判決を守らせることは、各地で裁判闘争を戦っている国民にとっても、切実な問題です。
 ラムネットJでは、有明海漁民・市民ネットワークなどと共同で、諫早湾の開門について分かりやすく解説したパンフレットを9月に発行する予定です。また、国に確定判決を守らせ、一日も早い開門を実現するための全国署名キャンペーンが、9月13日のキックオフ長崎集会を皮切りに始まります。多くのみなさんのご協力と共同した行動を心から呼びかけます。

ラムネットJニュースレターVol.17より転載)

諫早湾開門署名のホームページ
(諫早湾開門パンフレットもこちらのページからダウンロードできます)
諫早湾開門署名のオンライン署名サイト(change.org)

2014年09月22日掲載