湿地巡り:曽根干潟(福岡県)

曽根干潟の案内人・潟守 髙橋俊吾

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 曽根干潟は、九州北部の瀬戸内海側周防灘(豊前海)に面した、北九州市小倉南区にある広さ約517haの干潟です。竹馬、大野、貫、朽網の4本の川から運び込まれた砂や泥が堆積してできた前浜干潟で、遠浅で干満の差が大きいことから、江戸時代より現在に至るまで干拓や埋め立て等の開発が行われてきました。
 しかし、残された干潟では、これまでに300種を超えるゴカイや貝、カニ類などの底生動物や50種を超える魚類、200種を超える鳥類が記録され、豊かな生態系と生物多様性が守られて希少種、絶滅危惧種の宝庫となっています。
 90年代には、国際的に絶滅の恐れのある渡り鳥「ズグロカモメ」の重要な越冬地として認識されたことをきっかけに、埋め立てから保全へと方針転換されました。国の「重要湿地500」や「IBA基準重要野鳥生息地」として選定されたことなどをきっかけに、ラムサール条約湿地に、という動きもありましたが、いまだ実現していません。

多様な底質が生物多様性を支える曽根干潟
多様な底質が生物多様性を支える曽根干潟
波打ち際で産卵するカブトガニのつがい
波打ち際で産卵するカブトガニのつがい

 反するように進められた周辺海域の埋め立てや国策としての関門海峡浚渫土砂処分場の建設、港湾関係工事等々で、潮流や干潟の底質の変化も見られ、生物相や渡り鳥の行動にも変化があるようです。後背地でも道路建設などが進められ、今後の影響が心配されます。
カブトガニ産卵観察会

カブトガニ産卵観察会

 そのような状況下ではありますが、十数年前からは、「生きている化石」として知られる絶滅危惧種カブトガニの国内最大級の産卵・生息地として大変注目されています。
 また、近年は世界的な絶滅危惧種、クロツラヘラサギやヘラサギの渡来数が増加していますし、冬鳥御三家のズグロカモメ、ツクシガモ、ダイシャクシギの群れもまだまだ健在です。
 干潮時に陸続きとなる間島では、地質学的な特性が、景観や人々の歴史に深く繋がっていることを実感することができます。北九州ジオパーク構想の重要なジオサイトの一つでもあります。
 曽根干潟を次世代に残していくために、干潟の豊かさや素晴しさ、その役割を少しでも多くの人に伝えるための活動や環境保全の活動にも地域と連携しながらさらに積極的に取り組んでいきたいと思います。

ラムネットJニュースレターVol.25より転載)

2016年11月19日掲載