上関SLAPP訴訟(恫喝訴訟)が終結しました

弁護士/ラムネットJ理事 丸山明子

 2009年12月、祝島の島民である橋本久男さんと清水敏保さん、広島県三原市の岡田和樹さん、山口県周南市(当時)の原康司さんが、中国電力株式会社から約4800万円の損害賠償を請求されて始まった「上関SLAPP訴訟(恫喝訴訟)」ですが、8月30日に和解が成立しました。6年8カ月もの長い訴訟から、被告の皆さんが解放された瞬間でした。この間4人の皆さんは、一度も弱音を吐かないどころか、むしろ中国電力からの圧力には決して屈しないと、常に堂々とした態度をとられていたのですが、和解報告集会の際、訴訟や弁護団に見えないところで抱えていた苦しい思いを吐露され、そこに思いが至らなかったことを反省したところです。

田ノ浦

上関原発建設予定地の田ノ浦

 そもそもこの訴訟は、2009年11月5日〜11日、多くの祝島島民や全国から駆けつけた市民とともに、中国電力の埋め立て工事に対し抗議行動をしたところ、突然、4人の被告に対してだけ、約4800万円の損害賠償を請求されたというものでした。たった4人の被告らが4800万円もの賠償を負う理由が立つのか、損害自体本当に発生したのか疑問を禁じえない訴訟だったこともあり、中国電力が起こしたこの訴訟の本当の目的は、圧力をかけ反対運動を萎縮させることにあるいわゆるSLAPP訴訟として、被告団・弁護団一丸となって取り組んできたところでした。この訴訟には、ラムネットJ所属の小沢秀造弁護士(弁護団長)、永井光弘弁護士(事務局長)、堀良一弁護士、浅野正富弁護士、嶋田久夫弁護士、菅波完さん、私の7名が弁護団として参加しており、小沢弁護士と永井弁護士は兵庫県、私と堀弁護士は福岡県、浅野弁護士は栃木県、嶋田弁護士は群馬県と、期日ごとに全国各地から山口地方裁判所に駆けつけていました。きっかけは、浅野弁護士が時間がない中、広島空港まで駆けつけ、岡田さんの話を聞きに行き、各弁護士に声をかけて始まったと聞いています。さすがの行動力です。

 さて、今回の和解の主な内容は、中国電力が損害賠償請求を全額放棄する一方で、被告らが負うのは海上交通3法に違反して中国電力の関係船舶の航行を妨害しないことなど、すでに法律で決まっている至極当然の義務であり被告らの正当な反対運動は今後も守られる点を踏まえ、被告団・弁護団としては、勝利的和解と評価しているところです。ところが、和解日直前8月3日、山口県は中国電力に対し埋め立て免許の延長を許可し、いつ、中国電力が埋め立て工事を再開するのか、予断を許さない状況になってしまいました。訴訟はひと段落しましたが、被告の皆さんの反対運動はこれからもまだまだ続くわけです。私たちとしても、注意深く状況を見守る必要があるようです。

ラムネットJニュースレターVol.25より転載)

2016年11月19日掲載