第二次泡瀬訴訟での不当な高裁判決について

泡瀬干潟を守る連絡会事務局長/原告団長/ラムネットJ共同代表 前川盛治

第二次泡瀬訴訟高裁判決

不当判決に抗議する集会(高裁前広場)で声明を読み上げる筆者および関係者(2016年11月8日)

1.高裁判決は不当判決である
 2016年11月8日、第二次泡瀬訴訟の控訴審判決が言い渡された。判決の骨子は、①公金支出は、裁量権の範囲を逸脱していない、②鳥類、海生生物、干潟生態系の生息環境は相当程度保全されることから、公有水面埋立法(以下、公水法)4条1項1号の要件を欠くとは言えない、③環境監視委員会で評価検討がなされ、...公水法4条1項2号の要件を欠くとは言えない、等である。ことごとく、被控訴人の主張を丸のみにし、控訴人の問題点指摘を全く検証せず、被控訴人の裁量権を最大限尊重した判決であり、まさに不当判決であった。ここでは、「鳥類、海生生物、干潟生態系...相当程度保全」という判決内容の問題点に絞って検証する。

①海草藻場
 泡瀬干潟・海域には、海草藻場が約353haもあり、埋め立て地(187ha)には、被度50%以上の大型海草藻場が25haあるとして、それを「移植」で保全するとし、手始めに行われた「機械移植実験(減耗対策実験含む)」は「失敗」し、海草藻場約1.1haが失われた。
 事業者は「手植え移植実験」も行ったが、それも失敗し、約0.03haの海草藻場が失われた。
 埋め立て計画が変更された1区には、約46.1haの海草藻場があった。一部は移植に使われたが、他はすべて埋め立てられた。結局、「移植」「埋め立て」によって約46.13ha(353haの13%)の海草藻場が消失した。被度50%以上の大型海草藻場も工事前(2001年)は56.8haあったが、現在(2015年)は1.4haに激減している。

②野鳥
 泡瀬干潟は、ムナグロの日本最大の越冬地である。埋め立て前(2000年)は、1554羽が飛来したが、現在(2015年)は、僅か224羽である。泡瀬干潟の大きな特徴が失われつつある。

③新種・貴重種・絶滅危惧種
 事業開始後、泡瀬干潟・海域で確認された新種は11種ある。ニライカナイゴウナなど一部が「移動」させられたが、他は保全されず、「埋め立て地外を保全する」として当初の約束(アセス書記載)を反古にしてきた。貴重種・絶滅危惧種も同じである。

④干潟生態系
 判決は、埋め立てられる干潟は僅か2%であり、干潟生態系は保全されているとしているが、干潟とそれに続く95haは一連の干潟生態系であり、それが失われた。ラムサール条約では水深が6mを超えない海域も干潟や浅海域として湿地保全の対象となっている。埋め立て地は水深5m以下であり、95haの干潟・浅海域が失われた。トカゲハゼ、サンゴ類も減少傾向である。

仮設橋梁工事
アクセス道路(橋)を造成するための仮設橋梁の工事も急ピッチで進んでいる(2016年12月10日)
泡瀬干潟学習会
保護者も参加して毎年実施している、沖縄市立高原小学校3年生の干潟学習会(2016年11月12日)

2.泡瀬訴訟高裁判決は、翁長知事を裁いた最悪の最高裁判決にも反している
 辺野古の「埋め立て承認の取り消しの違法性を確認する訴訟」の最高裁判決が12月20日に示されている。この判決は、これまでにない最悪の判決例になるものであるが、その中でさえも、公水法4条1項1号要件に関しては「判断が、事実の基礎を欠いたり...でない限り...瑕疵があるとはいい難い(7頁)」とある。言い換えれば、「事実の基礎を欠い」ていれば、違法である。
 控訴審判決は、「事実の基礎を欠い」ており、不当判決である。私たちは、11月18日に上告および上告受理申し立てを行った。

2017年02月27日掲載