湿地巡り:三番瀬(千葉県)

三番瀬のラムサール条約登録を実現する会/ラムネットJ理事 立花一晃

sanbanze-map.jpg
 戦後、東京湾の1/5の面積、干潟の90 %以上が埋め立てられる中で、三番瀬は、盤洲干潟、三枚洲、多摩川河口などとともにわずかに残された、広さ1600 m2ほどの貴重な干潟・浅海域です。
 三番瀬は、墨田川、荒川、江戸川などが流れ込み、栄養分が豊富な海域です。ここは江戸時代から、将軍家の台所をまかなう御菜浦(おさいうら)として、海と漁民は保護されてきました。アサリ、ノリの養殖、ホンビノス貝(最近とれるようになりました)、カキ、スズキ漁など江戸前漁業が盛んに行われている海域です。また、スズガモ、ハマシギ、カイツブリ、カワウ、コアジサシ、ミヤコドリ等の野鳥が大変多く、国内の海岸湿地の中では、最大規模の水鳥渡来地です。

三番瀬の夕景
三番瀬の夕景
三番瀬に飛来した野鳥
三番瀬に飛来した野鳥

 私たちは、三番瀬の素晴らしい自然環境を子供たちに引き継ぐために、ラムサール条約登録を目指して、他の環境団体と共に20年以上活動しています。「三番瀬を守る署名ネットワーク」、「三番瀬のラムサール条約登録を実現する会」は、一貫して三番瀬の埋め立てに反対し、その署名を千葉県民を中心に15万筆以上集めました。
 私たちの運動によって、千葉県、浦安市、市川市、船橋市など関係する行政は三番瀬のラムサール条約登録に賛成していますが、千葉県が三番瀬の中を通る第二湾岸道路、市川市が京葉線塩浜駅地先に5000 m2の人工干潟造成を計画していて、登録はその後という方針です。各行政の消極的な姿勢に対して、当面重要なのは登録に反対する船橋漁協など漁業者との話し合いです。船橋漁協が以前は登録賛成の立場を明確にしていたことから考えて、その変更は理解できず、船橋市や各行政はこれを利用している面もあるからです。
 今後は、第二湾岸道路建設や市川市の計画する人工干潟に反対し、三番瀬の自然環境の保全と漁業の一層の振興に向けた私たちの主張を漁協にも理解してもらうことが必要です。同時に千葉県はじめ各行政とさらに粘り強く交渉し、早期にラムサール条約登録が実現するよう努力したいと思います。

ラムネットJニュースレターVol.27より転載)

2017年06月09日掲載