狭山丘陵の湿地を守るために墓地開発計画の中止を

トトロのふるさと基金事務局長 北浦恵美

 ゆるやかな丘と谷が織りなす四季折々の里山の景色の中に数多くの動植物が息づく狭山丘陵。東京と埼玉にまたがり、東西約11 km、南北約4kmにわたって広がり、首都圏に残された緑の孤島ともよばれています。
 この丘陵の谷頭で、2013年12月に墓地開発の話が持ち上がりました。そこは丘陵に残された貴重な湿地の水源地です。狭山丘陵には現在55の谷戸地形が残されていますが、開発が進み、湿地が残存しているのは、埼玉側では11を数えるのみ。この湿地は、県立狭山自然公園内にあり、いきものふれあいの里スポットにも指定されています。ヘイケボタル(埼玉県準絶滅危惧種)等の生息も確認され、多くの野鳥が訪れ、水浴びや採餌場として利用されています。ここを守りたいと、私たちが活動を始めてから3年。

墓地計画地の急斜面
墓地計画地の急斜面
ヘイケボタルが舞う湿地
ヘイケボタルが舞う湿地

 当該地は過去に残土で埋め立てられており、その急斜面上に造成する計画であることから、地震時の崩落の危険性を指摘する斜面防災専門家・京都大学釜井俊孝教授の意見書を提出。2015年に所沢市自治連合会が集めた計画の中止と公有地化を求める署名は6万を超え、市長も「計画がとりやめになったら、公有地化に取り組む」と表明。しかし、事業者は未だ計画を進めるとし、ついに昨年現地の樹林伐採が強行されてしまいました。
 そこで、昨年7月から、「狭山丘陵・葛籠入(つづらいり:当地の旧名です)保全トラスト」を開始、計画地の公有地化のためのトラスト寄付金を募り、多くの市民にこの湿地の重要性と保全への支援を訴えています。現在、3742万2382円が集まっています。また、この2月には、ラムネットJの理事、陣内隆之さんにお出でいただき、狭山丘陵の湿地保全の重要性についてお話しいただきました。
 昨年の夏には、100を超えるヘイケボタルが確認され、さやかな光が静かな湿地を満たしました。ここには私たちの忘れものが残されています。昔はどこにもあった風景が今では貴重な宝物です。なんとか守りたい! 皆さまのご支援をお願いいたします。

ラムネットJニュースレターVol.27より転載)

2017年06月09日掲載