「世界湿地の日」記念行事〜荒尾での集会の報告〜

ふくおか湿地保全研究会 河野紀美子

ポスター

会場に掲示された「渡り鳥のための国際的な協力の必要性」と「ヘラシギの保全」を訴えるポスター

 2017年2月5日、熊本県荒尾市で「シギ・チドリ類の渡りの今」と題した「世界湿地の日」記念行事が開催されました。鳥類の中でも特に減少傾向が著しいシギ・チドリ類の保全をテーマにしたシンポジウムです(荒尾市とラムネットJの共催)。
 午前中、荒尾市蔵満海岸で干潟視察。あいにくの雨模様になり短時間の視察になりましたが、広大な荒尾干潟の素晴らしさを実感できました。
 午後は荒尾市総合文化センターを会場に、  「今、ヘラシギとシギ・チドリ類、そして東アジアの干潟は?」をテーマにした講演と、各地からの報告が行われました(下表参照)。シギ・チドリ類の保全に関わっている方や行政の方など90名ほどが各地から参加、熱心に聴かれていました。
 シギ・チドリ類フライウェイの大きな視点からの講演を聴き、そして有明海の現状報告を聴いて、全体像の理解が進んだのではないかと思います。
 漁業者の方の「鳥類を含めた生き物たちとの共生があってこそ豊かな自然であり、人間にとっての恵みとなる」という趣旨のお話は、干潟の恵みで生活を営んでいらっしゃる方からのメッセージとして心に残るお話でした。
 有明海の3つのラムサール条約湿地、荒尾干潟・東よか干潟・肥前鹿島干潟が手をつなぎ、有明海の豊かな自然を守っていけることを願っています。

小雨の中での荒尾干潟視察
小雨の中での荒尾干潟視察
ヘラシギ最大の越冬地であるミャンマーからの報告
ヘラシギ最大の越冬地であるミャンマーからの報告

 前日の4日には、九州各地のネットワークを作るための会合が開かれました。東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップ(EAAFP)とミャンマーからの講演、九州各地(福岡県博多湾、大分県中津干潟、佐賀県有明海、熊本県八代海、鹿児島県奄美諸島)から現状が報告されました。
 九州のシギ・チドリ類の飛来地は、西側の有明海が有名ですが、東側の中津干潟も全国有数の飛来地であり、サブフライウェイとなるその他の地域も含め、一体となり保全を行っていく必要性を再確認し、今後連携をとりながら情報交換を行っていくことになりました。

●講 演
「荒尾干潟の生きものたちとラムサール条約」
  立命館アジア太平洋大学 山下博美
「東アジア・オーストラリア地域フライウェイのシギ・チドリ類」
  EAAFP事務局 市川智子
「ヘラシギの渡り・越冬地ミャンマーの干潟で」
  ミャンマーから Pyae Phyo Aung

●地域からの報告〜有明海とシギ・チドリ類〜
「荒尾干潟・有明海に来たヘラシギ。日本では?」
  ラムネットJ 柏木 実
「荒尾干潟のシギ・チドリ類」
  日本野鳥の会熊本県支部 安尾征三郎
「東よか干潟と肥前鹿島干潟のシギ・チドリ類」
  日本野鳥の会佐賀県支部 中村さやか
「有明海・荒尾干潟の漁業の現状とシギ・チドリ類との共生」
  荒尾漁業協同組合 田中太郎

ラムネットJニュースレターVol.27より転載)

2017年06月09日掲載