湿地巡り:黒沢湿原(徳島県)

黒沢湿原を守ろう会会長 内田忠宏

 黒沢湿原は四国のへそといわれる三好市の標高550mの山あいにある盆地状の湿原です。湿原は南北約2km、幅は100〜300mほどあり、面積約40haの四国では最大級の湿原です。1960年頃までは水田があり、耕作放棄された湿田に湿原植物が繁茂し、65年にサギソウなどの植物群落が徳島県天然記念物に指定されました。指定から50年が過ぎ、ヨシやススキの侵入と乾燥化、オオミズコケの堆積などで荒廃が進んでいますが、黒沢は規模からいっても、植物、トンボなど生き物の多様さからみても、かけがえのない貴重な湿原であります。

黒沢湿原地図
黒沢湿原1
山あいに細長く広がる黒沢湿原の風景

 黒沢湿原で貴重とされる湿原植物には主なものとして、ヒツジグサ、サギソウ(野生絶滅)、トキソウ等があり、徳島県RDB掲載種は50種類を超えます。県内では黒沢でしか見ることのできない植物も十数種類あります。
 また黒沢湿原ではモートンイトトンボ、オオイトトンボ等の小さな種から、大きなルリボシヤンマなど五十数種類(徳島県内九十余種)のトンボが確認されています。里ではほとんど見ることのできなくなったドジョウやメダカが池に生息するなど、多彩な生き物のすみかとなっています。
 黒沢湿原を守ろう会は湿原を巡視して、植物の無断抜き取りやシカ・イノシシの被害監視、サギソウの育成をはかるためにヨシなどの適正な刈り取り活動をしています。
 今後、湿原の乾燥化による湿原植物群落の衰退と荒廃にどのように対処していくかが、大きな課題となっています。

黒沢湿原2
ヒツジグサが咲く湿原の池
黒沢湿原3
ラムネットJニュースレターVol.28より転載)

2017年08月25日掲載