報告:第7回 田んぼ10年プロジェクト地域交流会
〜田んぼで育つ、ひと・稲・生きもの交流会 in 小田原〜
ラムネットJ理事/水田部会 金井 裕
2017年6月18日に、田んぼの生物多様性向上10年プロジェクト地域交流会の「田んぼで育つ、ひと・稲・生きもの交流会 in 小田原」が小田原市曽我の梅の里センターで開催されました。今回の交流会は、耕作放棄や都市化による水田と生き物の減少に、有機農法の展開と消費者との連携で対抗する活動に焦点をあてたものでした。
●エクスカーション「田んぼ巡り」
午前中は第Ⅰ部「田んぼ巡り」で、小田原食とみどりが会員の参加で稲作を行っている酒匂川東岸の「小田原めだかが棲む春みずたんぼ」を石川信夫氏の案内で見学した後、日本野鳥の会神奈川支部が地元の方々とサシバの復活を目指す「沼代サシバプロジェクト」の谷津田を散策しながら伊豆川哲也氏から説明を聞きました。
田んぼ巡り:沼代サシバプロジェクトの谷津田で説明を聞く
午後から梅の里センターで行われた交流会での発表の様子
●基調報告/地域からの報告
午後の第Ⅱ部地域交流会は、会場満杯の参加者(110名)となりました。まず基調報告では、呉地正行氏(ラムネットJ共同代表)が「『田んぼ10年プロジェクト』と小田原・足柄の田んぼの価値」と題して、神奈川県内の稲作と生き物の保全との関係を論じました。樋口公平氏(三翠会湘南タゲリ米プロジェクトリーダー)からは「都市近郊での生きものブランド米の事例」と題して、都市化が進み田んぼや農地がなくなっていく中で、タゲリという鳥を中心に置いたブランド化で田んぼと生き物を守る活動の実際について報告がありました。
地域からの報告では齋藤文子氏(小田原食とみどり)から「消費者と生産者が共に創る地域」として、消費者である会員の農作業への参加が地域と生き物の理解と保全に重要であることが、伊豆川哲也氏(あしがら冬みず田んぼの会)からは「鴨や蛙の命は冬の田んぼでつながっている」として冬みずたんぼ展開の実際を、笹村出氏(あしがら農の会)から「あしがら農の会と『たんぼでそだつ、ひと・稲・生きもの』」として、自給自足の農業の可能性について、山田純氏(おだわら農人めだかの郷)からは「おだわら農人めだかの郷の活動」として野生メダカの保全と稲作との関係、石綿敏久氏(小田原有機の里づくり協議会・小田原有機農法研究会)からは「環境保全型農業を通しての食農教育と里山再生への取り組み」として地域社会の活性化や円滑な運営への有機農業の役割について報告がありました。
●パネルディスカッション
「小田原・足柄の農業のあり方とその未来」と題したパネルディスカッションでは私がコーディネーターを務めました。パネラーに基調報告者と地域からの報告者に加えて、小田原市経済部農政課長の青木一実氏と志村屋米穀店の志村成則氏が参加し、地域行政や地産米の流通との関係も含め、生き物と人の生活にとって稲作を継続することの重要性と課題、未来への可能性について議論しました。
主催:ラムサール・ネットワーク日本
共催:小田原食とみどり、あしがら冬みず田んぼの会
後援:環境省関東地方環境事務所、小田原市、神奈川新聞社
協力:あしがら農の会、おだわら農人めだかの郷、小田原有機農法研究会、志村屋米穀店、パルシステム神奈川ゆめコープ、ジョイファーム小田原、パルシステム連合会、小田原かなごてファーム、おだわら環境志民ネットワーク、小田原・足柄地域福祉事業所 報徳ワーカーズ、小田原有機の里づくり協議会
※この交流会は地球環境基金の助成と企業からのサポートをいただいて実施しました。
(ラムネットJニュースレターVol.28より転載)
2017年08月25日掲載