日本の亜熱帯地域最後の自然海岸・嘉徳について
ラムネットJ理事 安部真理子
奄美や沖縄の多くの場所では護岸や漁港などができてしまい、自然のままで残っている砂浜がとても少ないのですが、奄美大島南部に位置する嘉徳海岸は全く手付かずの自然のまま残っています。
この浜には絶滅危惧種であるアカウミガメとアオウミガメも産卵に来ます。また少し前の話になりますが、2002年にはウミガメの仲間であるオサガメが産卵に上がったことが記録されています。オサガメの産卵の記録は日本でこれが唯一であり、世界最北端の記録です。またオサガメは2億年前の恐竜の時代からその形を変えていない極めて古代的なウミガメで、現在世界ではもっとも希少なウミガメとして国際的に厳重な保護が求められています。
国の天然記念物であるオカヤドカリをはじめとするヤドカリ類も海と陸を行き来しています。海岸に流れ込む嘉徳川にはリュウキュウアユが棲んでいます。リュウキュウアユはかつては沖縄本島にも生息していたのですが、いまでは奄美大島だけに残る貴重な魚です。
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嘉徳浜から見渡す太平洋
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エメラルドグリーンの水が流れる嘉徳川
この美しい場所に全長530m、高さ6.5mのコンクリートの直立護岸の建設計画が浮上しています。ここでは数年前より砂浜が侵食され、家やお墓を守るため護岸を作って欲しいという要望が出されました。しかしながら豊かな自然を失うことを懸念し、保全を訴える声も出てきました。
両者の声が取り上げられることになり、護岸建設が見直され、工事を伴わない方法も検討されることになりました。最近の自然保護の現場ではめったにない英断です。事業者である鹿児島県が組織する検討委員会では、砂浜の砂がどこから来るのか、なぜ減るのか、県内で行われてきた護岸工事のその後を検証すべきである、などのことが議論されています。引き続き、日本の亜熱帯地域最後の自然海岸である嘉徳海岸をそのまま残せるよう、護岸ゼロの案を後押ししていきたいと思います。
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▲地元の団体「奄美の森と川と海岸を守る会」ではこの海岸を守る署名をchange.orgで集めています。ぜひご協力ください(QRコードからアクセスできます)
(ラムネットJニュースレターVol.29より転載)
2017年11月23日掲載