湿地巡り:渡良瀬遊水地(栃木県・群馬県・茨城県・埼玉県)
ラムサール湿地ネットわたらせ/ラムネットJ事務局長 浅野正富
渡良瀬遊水地は栃木県、群馬県、茨城県、埼玉県の県境にある本州以南最大のヨシ原で生物多様性の宝庫です。植物約1000種(絶滅危惧種は約60種)、昆虫約1700種(絶滅危惧種は62種)、鳥類約260種(絶滅危惧種は44種)が確認されており、毎年8月から9月には数万羽のツバメがヨシ原で塒をとり、チュウヒの越冬地としては日本有数です。2012年7月のラムサール条約湿地登録から5周年を迎え、第2調整池では利根川上流河川事務所による湿地保全・再生事業によって大小さまざまな池が出現し、同河川事務所や関東地方環境事務所、地元4市2町や民間団体による渡良瀬遊水地保全・利活用協議会も設立され、日本遺産認定申請をめざす動きや、コウノトリ・トキの舞うふるさとづくりの取り組みなど、登録前には予想もしなかった活況を呈しています。また、野田で2016年に放鳥されたコウノトリの「ひかる」も、2017年8月から9月にかけて計16日間も飛来しました。
湿地保全・再生事業で出現した池
渡良瀬子ども自然塾のヨシ船作り
ラムサール湿地ネットわたらせは、2006年から渡良瀬遊水地の条約湿地登録推進のために活動した「渡良瀬遊水池をラムサール条約登録地にする会」が、2013年に登録1年を機に改称したもので、登録後は遊水地の賢明な利用を目指し活動しています。
ここ数年注力している活動は「渡良瀬子ども自然塾」です。登録後、渡良瀬遊水地は、学校教育の自然観察等で利用されることが多くなりましたが、決められた時間、決められた目的のために遊水地に接するだけでは、遊水地の本当の魅力を理解することはできません。思う存分ヨシ原の中で遊ぶことにより、子どもたちはその身体で遊水地の魅力を感じることができるのです。
1人でも多くの子どもに遊水地を原体験してもらい、将来真剣に湿地や自然の保全を考える大人になってもらえたらという思いを支えに、私たちは活動を続けています。
(ラムネットJニュースレターVol.30より転載)
2018年03月02日掲載