田んぼ10年地域交流会 in 河北潟の報告
ラムネットJ共同代表 安藤よしの
ラムネットJでは、河北潟湖沼研究所との共催で、「田んぼの生物多様性向上10年プロジェクト地域交流会 in 河北潟」を、11月25日、26日に石川県で開催しました。
●バスツアー(11月25日)
約20名のバスツアー参加者は、冬型の気圧配置となった小雨が降る金沢駅を13時30分に出発。最初は柳瀬川堤公園の近くで、虹に迎えられつつ河北潟沿岸土地改良区のみなさんの外来種チクゴスズメノヒエの除去活動を見学。冷たい気候の中で手作業での除去はいかにも大変ですが、機械では十分な除去ができず、水路がふさがり、アサザなどの在来植物が消えてしまうとのことでした。次いでサンセットパーク内灘道の駅では、河北潟の全景とともに、干拓事業のために砂丘を開削して日本海に潟をつなげた内灘放水路を見学。その後、河北潟干拓地内に入り、ヨシと市民が親しみ、ヨシ原の重要性を知ってもらうために活躍し、今は土に帰るべく野外に置かれているヨシ舟を見たあと、小麦などのカモ類の食害防止を理由に作った「おとり池」という名称の水田を見せてもらいました。減反政策の中で河北潟干拓地で田んぼを作るための苦肉の策だったとのことです。解散場所の本津幡駅に向かうバスの車中からコハクチョウも見られ、ツアーは終了しました。
外来種チクゴスズメノヒエの除去活動
地域交流会でのパネルディスカッション
●地域交流会(11月26日)
翌日は10時から津幡地域交流センターで地域交流会を開催しました。矢田富郎津幡町長のあいさつで始まった会は、ラムネットJ水田部会長の呉地正行さんが田んぼ10年プロジェクトのこれまでとこれからを報告した後、河北潟湖沼研究所理事長の高橋久さんが、河北潟における自然再生の取り組みについて発表しました。河北潟の生物多様性と生息環境は、全般的には劣化した状態から回復してはいないが、再生への転換が可能な時期に来ているとのこと。石川県立大学客員教授の上田哲行さんは「殺虫剤は風景をも損なう」と題し、アキアカネの調査結果をもとに、私たちの原風景である身近な生き物を自分たちのために守るという観点が必要であると報告しました。
午後は、グリーン・アース農地・水・環境保全組織事務局長の鈴木時秀さんによる「河北潟干拓地の取り組み」など、計5件の地域における活動事例が報告されました。
最後のパネルディスカッションでは、パネラーから、「持続可能な地域づくりには田んぼや田園環境のバックボーンが前提で、精神的なものが欠かせない」「生きものや田んぼに無関心な人々に伝えることが重要で、生きもの調査などを通じて非常に優れた小学生も出てきている一方、子供たちが生きものと楽しく接するような機会を奪ってきた問題は大きい」「生産性ではアメリカなどに負けてしまう、安全性や田んぼの生物多様性向上の点から消費者と生産者を結び付ける必要がある」などの発言がありました。
河北潟湖沼研究所の「河北潟の魚を食べる」というビジョンに関連して、農薬を使わない農業と、再汽水化についてどう考えるかという問いに、参加者からは「汽水化については影響を調査して、問題がなければOK」「大規模化しているので、無農薬が可能かどうか疑問はあるが、水はきれいになってほしい」「多様な生きものが支える農業というものを生産者が理解することが大切」などの前向きな意見がほとんどでした。ビジョンの実現に向け、力強い一歩が踏み出された交流会となりました。
(ラムネットJニュースレターVol.30より転載)
2018年03月02日掲載