報告:第9回 田んぼ10年プロジェクト地域交流会in愛知(豊田市)―サシバのすめる水田作り―
ラムネットJ理事 金井 裕
●第1部 田んぼめぐり(10時〜12時)
参加者34名はバス2台に分乗して、豊田市自然観察の森ネイチャーセンターを出発し、川島賢治氏(豊田市自然観察の森チーフレンジャー)と大畑孝二氏(日本野鳥の会施設運営室長)の案内で、自然観察の森内のサシバ復活のため、水田や低茎湿性草地の復元作業が行われているカエルの谷と、ラムサール条約湿地「東海丘陵湧水湿地群」のひとつの矢並湿地を訪れ、湿地環境と管理等の活動内容の解説を受けた。
午前中の「田んぼめぐり」で訪れたカエルの谷
午後の地域交流会に参加されたみなさん
●第2部 地域交流会(13時〜17時・豊田市自然観察の森ネイチャーセンター研修室)
1)基調報告
ラムネットJ共同代表の呉地正行氏が「田んぼの10年プロジェクトが結ぶサシバと人の未来」と題して、田んぼの10年プロジェクトの紹介と、サシバが冬を越すフィリピンの水田地域との今後の連携について報告を行った。
2)地域からの報告
豊田市内や愛知県内での活動として、次のような報告が行われた。
①「サシバのすめる森と水田づくり・豊田市自然観察の森の取組み」大畑孝二氏(日本野鳥の会):サシバの再営巣を目指して水田や湿地環境の復元整備を行っている。
②「田んぼの学校 エコたん:稲の自然栽培の試み」高山博好氏(NPO法人びすたーり代表):障がい者の働く場所として無農薬・無肥料・不耕起稲作を行うともに、市民と田んぼの生きものとのふれあいの場を提供している。
③「トヨタ自動車新研究開発事業におけるサシバとの共存をはかる環境保全の取組み」村山浩二郎氏(トヨタ自動車株式会社):事業地内の水田・湿地や里山環境で、農家の協力を得て生きもののための管理を行っている。
④「愛知県における水田の生物多様性保全の実践取組」田中雄一氏(愛知県農業総合試験場主任研究員):水田と水路間の魚道や小動物が水路から脱出するためのカエルネットなどの技術や工作物を開発している。
⑤「生きものブランド米:赤とんぼ米の取組み」三橋豊氏(JAあいち豊田):協力農家とともに使用農薬の制限など生きものに配慮した特別栽培米の発展につとめている。
3)パネルディスカッション
コーディネーター:夏原由博氏(名古屋大学教授)、コメンテーター:日野輝明氏(名城大学教授、サシバ復活の谷戸の環境管理とモニタリングを実施)、牛山克己氏(北海道宮島沼湿地センターでガン類の保全と食害低減のため農家との協力)、パネラー:基調報告・地域からの報告者で、稲作農家ためにも生物多様性向上が重要なこと、研究技術開発拠点と生産者団体や市民団体など広い連携が重要なことが議論された。
今後は、愛知県内での活動がさらに発展するとともに、活動内容が広く全国に紹介されることを期待して、交流会は終了した。
(地球環境基金助成事業、ICEBA2018のプレイベント)
(ラムネットJニュースレターVol.32より転載)
2018年08月27日掲載